とても個人的なことで恐縮ですが、使っているスマートフォンが2年以上経ち、だいぶバッテリーの減りが早くなったのでそろそろ新しいものが欲しいと思っています。そのせいなのかWall Street Journalの『India Toward Smartphone Dominance:インドはスマートフォン(市場で)優勢に向かう』というタイトルが目に飛び込んできました。
この記事の中でWSJの記者Clément Bürge氏は、スマートフォン市場においてインドが飛躍する可能性をレポートしています。現在世界の68%のスマートフォンは中国で生産され、彼らは組み立てを行うだけでなく、ネジを含めたあらゆる部品を国内で生産することができ、強力なエコシステムを持っています。一方、中国一強に対する危惧や、製造コスト上昇のため、中国以外に生産箇所を移す例も出てきています。そこで浮上してきたのがインドというわけです。例えばSamusungは中国から工場を撤退させ、新たにインドに工場を建設し、中国メーカーに対抗しようとしています。またClément 氏によると、インドには以下のようなアドバンテージがあると説明しています。
13億人という人口の多さ
中国よりも安い従業員賃金
国内はガラケー利用者が多く、スマートフォンはこれから伸びる
電子機器の多くはインド国内で製造され、開発のノウハウがある
ディスアドバンテージとしては、スマートフォンのパーツのうち12%しかインド内で製造できず、部品の多くは中国から輸入しており、特にカメラやメモリといった主要なパーツについてもインド国内に製造ノウハウがないことが挙げられます。
それでもインド政府およびModi首相もスマートフォン市場にとても協力的であり、スマートフォンメーカーに支援金を出すなど、ここ数年に渡って支援策を講じています。なお、支援金についてはインド国内のメーカー(Micromax社など)以外にAppleやSamsungにも提供されています。
ただ、個人的にはやはり中国強しといった印象が強いです。スマートフォン市場に限らず、世界経済における中国の存在はますます強くなっているように思えます。
先月1月25日〜29日まで開催された『世界経済フォーラム』のオンライン版会合『ダボス・アジェンダ』においても、中国の習近平国家主席が基調講演を務めました。ちなみに、習近平国家主席がダボス会議に参加するのは2017年以来4年ぶりです。本会議において、習近平国家主席は、国際社会の課題について「国際社会は各国が合意したルールと共通認識で統治すべきで、一カ国や数カ国が命令するものではない。」と強調し、世界でアメリカの指導的立場の回復を目指すバイデン新政権を牽制したと報道されています。
その一方、アメリカ・イギリスの首脳は欠席し、これに合わせるように英語圏のカナダ・オーストラリア・ニュージーランドの首脳も欠席しています。新型コロナウイルスの影響でアメリカが徐々に疲弊していく中、中国の存在は大きくなっていき、非英語圏の各国を巻き込んで、次世代の覇権国として認識されようとしているように見えます。
このまま中国が次の覇権国家になるのか、それともインドのような国も力を伸ばし多様な国家が台頭するかたちのグローバリゼーションになるのか。当面インド製のスマートフォンを手にすることはないだろうと思いますが、遠くない将来ひょっとしたらMicromax社のスマートフォンを持っている可能性もあるでしょう。アフターコロナの経済がどうなるのかについて引き続き注視していきたいと考えています。