いよいよ差し迫った米国大統領選に関連して、トランプ大統領とバイデン候補者の主張について分析してみたいと思います。執筆時点ではまだどちらの候補者が大統領になるか決定していませんが、どちらになったとしても両候補者がどのような主張をしていたのか把握しておくことは有益だと考えています。
さて、両者の主張している分野は多岐に渡りますので、ここでは特にIT業界に関係しそうな以下の部分をピックアップするかたちでご紹介していきます。
Innovation and Research and Development (R&D)
Internet and Digital Economy
Broadband and Telecommunications
Innovation and Research and Development (R&D)
R&Dに関しては、トランプ大統領がAIや量子コンピューターなど新しい分野に対して積極的なのに対し、バイデン候補者は医療や物理インフラに対する開発を推し進めていくことを重視しています。
そのため、トランプ大統領はイノベーションに対する制限を減少させていくことにフォーカスし、予算もAIや量子コンピューターなど『未来産業』については2022年度 22億ドルを要求しており、これは2020年度よりも30%ほど高い値です。一方、予算に関してはバイデン候補者も今後4年間で3千億ドルをR&Dに投資するとしていますが、中小企業・マイノリティ・女性起業家の支援に注力するとしています。
Internet and Digital Economy
Cybersecurityに関して、トランプ大統領とバイデン候補者の主張は明確に異なっていると思います。トランプ大統領はすでに『Clean Network』を発行し、名指しで中国を締め出しています。なお、トランプ大統領はClean Networkについて、「アメリカ市民の安全とアメリカ企業の持つ機密性の高い情報を、中国共産党などの攻撃的な侵入から守る」ためと主張。こういった活動に対し、バイデン候補者が所属する民主党は、Democratic-Party-Platformの中で「オープンインターネットの原則に再コミットすること、そして、世界の他の国々や人口をデジタルでサイロ化する取り組みに積極的に反対する。 」と主張しています。
もうひとつ争点になっているのがセクション230に対する主張です。トランプ大統領は、セクション230を明確にする規制を提案する方向で動いています。バイデン候補者は、セクション230はただちに無効化すべきだとしています。余談ですが、セクション230とは、問題のあるコンテンツ(例えばフェイクニュースなど)を投稿する人がいた場合に、サービスプロバイダーがそれに対する直接的な責任を負うわけではなく、投稿した人が責任を負うと定めている条項です。最近ですとFacebookがやり玉にあげられており、バイデン候補者は、「Facebookはセクション230に該当するインターネットカンパニーを超えたプラットフォームでだから訴訟対象にすべきだ」と主張しています。どちらが大統領になるのかでFacebookのようなプラットフォームに対する責任も変わってくるでしょう。
Broadband and Telecommunications
アメリカ全土に対するネットワークインフラの整備および5Gネットワークに関してはどちらも積極的です。トランプ大統領は、「世界でもっとも偉大なインフラシステムを構築する」と公約しており、バイデン候補者も「“Universal Broadband Access“という名称で、すべてのアメリカ人がブロードバンドを利用可能にできるよう拡張していく」としています。
5Gに関して、トランプ政権が一部の民間企業に国営5G網の運営を委託するという噂が立ち批判されたため、ホワイトハウスは、5Gの展開については民間部門が主導することを明らかにしました。トランプ大統領は、この方向転換によって 「全国的な高速無線インターネットネットワークを確立する 」と主張しています。バイデン候補者は、「5Gはすべてのアメリカ人に対するブロードバンドツールとして拡張する」とし、3千億ドルのR&D予算に5Gも含める方向であると言及しています。
まとめ
両者の主張を表にまとめると以下のようになります。
アメリカにとっても技術革新がもっとも重要な鍵であることは間違いありません。そして、アメリカが10年後、20年後もイノベーションリーダーでいるためには中国と競争していくことになります。AI、Cybersecurity、5G、といった技術をどのように発展させていくのか、どちらが大統領になったとしても継続してウォッチしていきたいと思っています。