2021年になりましたが、新型コロナウイルスの影響は依然として強く、継続してWork from homeが求められている状況です。Flexeraがアナウンスした「2021 State of Tech Spend Report」を見ても、Work from homeへの投資は圧倒的に多いことが分かります(上図をご参照ください)。
さて、 リモートワークが主流になったことで失われてしまったものがありますが、それはいったい何でしょうか?
そうです。従業員同士で雑談する時間や機会が無くなってしまったのです。「雑談する時間なんて必要なの?」とお思いかもしれませんが、実は非常に重要です。イノベーションを生み出すにはさまざまな要素があり、これについては色々な主張があるかと思いますが、その重要な決め手となるのがセレンディピティ(Serendipity:思わぬ掘り出し物を見つける幸運)だと言われています。そして、セレンディピティは、例えばオフィスでの井 戸端会議(英語では”Water Cooler”と言います)のように、たまたま他の社員に出くわすといっ た、互いが物理的に近い距離にいることによって促されます。
イノベーシ ョンは人やアイディアの予期していないような衝突によって生まれるとされていますが、リモートワークではこうした偶然の出会いがめっきりなくなってしまいました。
それでは、物理的に離れている状況の中で、いかにセレ ンディピティを生み出すことができるか、つまりオンライン上で「オフィスの井戸端会議」はどのように作り上げていくべきでしょうか。
Nikkei Asiaの記事によると、Johnson & Johnson(ジョンソンエンドジョンソ ン)の人材部長であるPeter Fasolo氏は、そのヒントにAdam Kucharski教授が考案した「DOTSモデル」を用いました。DOTSモデルとは、もともとウイルスが人に伝染る確率を「D:ウイルスを保持している期間」、「O:他社との接触数」、「T:他社が感染する可能性」、「S:感染しやすさ」の掛け算で算出します。これをイノベーションに当てはめて、「D」は特定の誰かが新しいアイデアを持っている期間、「O」はそのアイデアを話した人の数、そして「T」と「S」はそういったアイデアを持っている人が話を聞く機会に置き換えました。これらの要素を高めるために「仮想的な井戸端会議」を作り、組織横断的に話ができるようAIを用いたマッチングを開始したそうです。同時に従業員が参加したくなるような仕掛け作り(例えば参加するとポイントがもらえて、ポイントを集めると景品がもらえる等)も今後拡充していくとのことでした。Peter氏によれば、利用が進むことでディープラーニングが洗練されセレンディピティを最大化できると期待しているそうです。そうなれば従来の物理的な距離によるセレンディピティよりもイノベーションが生み出される確率が増え、革新的な職場文化になるチャンスがあると述べています。
また筆者の所属する組織は大きくないので偶然の出会いによるアイデアの創出といったアプローチはしておりませんが、雑談する機会を設けることでの「気づき」を促進する施策はいくつか取っています。一例ですが、Slackに雑談するスペースを設け、1日1回は投稿するといったことや、Virtual Office空間としてSococo(https://www.sococo.com/)を用いて雑談するスペース(TerraceやCafe)を設けました。これに関してはまだ改善の余地がたくさんあり、私たちとしても色々と試している段階です。
こうした動きは社内に閉じたものではなく、社外に関しても見られるようになってきています。例えばLunchclub(https://lunchclub.com/home)は、場所・日時・目的(他社と関わりたい、面白そうな人と会いたいなど)を選択するだけで、Google Calendar上にマッチングした人とのオンラインミーティングを自動で設定してくれます。あとは時間になったらGoogle Meetで会話するだけです。実際に何度か利用してみましたが、このマッチングの精度が実に秀逸で、どのような情報を収集してマッチングしたのか毎回驚かされます。
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Withコロナ、Afterコロナの働き方に関して、皆さまの関心は高いかと思います。今後も面白そうなスタートアップ企業や取り組みがあれば紹介していきますので、2021年もどうぞBay Area News Letter をよろしくお願いいたします!