Source: Gravitas-Apple vs Facebook on Privacy
データプライバシーを巡る米アップル社と米フェイスブック社の対立が激しくなってきています。この対立は、ビッグテックを代表する両社の利用者データと、それに纏わるビジネスモデルに対する戦いでもあるとも言えます。
「The data is a new oil(データは次世代の石油)」と言われるように個人データの扱いについては、プライバシーの取り扱いが問題となっていますが、ビジネスモデルとも関連して、主権の争いが激しくなっています。それではいったい、アップル、フェイスブックは、どのような主張をしているのでしょうか?
アップルは、プライバシーを「基本的人権」と位置づけています。iPhoneやiPadの自社製品を利用するうえで、個人情報の収集は利用者が決める権利があり、制限をつけ、プライバシーを守るべきと主張しています。具体的には、利用者がアプリをダウンロードする際にターゲティング広告や広告測定に利用する端末識別子の提供に同意を義務付けるようになっています。それに対し、その個人情報を利用した広告で収益をあげるフェイスブックは、制限されると収入源の減少につながり、その顧客である中小企業の利益を損なうと反論を行っています。つまり、利用者側のデータ開示の権利に対して、中小企業を中心としたビジネス側の利用者へアクセスする権利をぶつけており、新型コロナウィルスの影響でオンライン販売に活路を見出そうとしている企業に負担を強いて市場への悪影響を及ぼす行為だと主張しています。
一見、両者の言い分を聞いてみると、個人情報の所有権は、個人に有るためアップル社に分があるように見受けられます。では、アップルの制限が正しいかと言うと一概には言えない、これは、プラットフォーマーである両社の戦いであることが見て取れます。
これら戦いが、米国のみならず、グローバルに影響を及ぼしており、インドでのデータ保護・規制に対する議論に波及していることから、両者だけの問題でなく、まさに個人情報の争奪戦になっていくのではという機運が高まっています。5分程のYoutubeビデオで、英語になりますが、Privacy is a New Sales Pitch(プライバシー保護を名目にしたセールス活動)として、この両者の争いを解説しています。ここでは、プライバシーの名の下に、アップルは自社製品上で個人情報の収集を制限することにより、今までFreemiumモデル(広告等により無償で提供してきたアプリサービス)で提供してきたアプリケーションは利用者に課金をせざるを得ない状況になり、アップルは、そのアプリ収益の30%を徴収する仕組みなので、彼らにとって好都合になるという点を指摘しています。聞えは良かったアップルの主張も、やはり、純粋な利用者視点での論争を繰り広げているのではないことが伺えます。更に、ここでは、アップルとフェイスブックの間でデータ元で当事者となる私たち自身が「サンドイッチ状態に挟まれており、どちらが正しいか、判断する法が定まっていない」と説明しています。これは米国でも、インドでも曖昧になっていて、厳密に、両社が行っているデータ収集や制限に対する国家レベルの法律が定まっていないと言われています。詳しくは調べておりませんが、欧州での個人データ保護法であるGPDRや米国カリフォルニア州の州レベルで施行されているCPRA等、保護に対する動きはあるものの、これらビッグテックの争いを規制するまで及んでおらず、そのギャップを突いて、両社が都合が良いように「Judge(判断)」していると述べています。どちらの訴えに対しても、何億人ものアップルやフェイスブックユーザーに影響があるのに、なぜ、国家レベルで、ここで論争となっている個人情報を守れないのかと、違う視点での主張を展開しています。
ここにきて、消費者保護を訴えるアップルの優勢に見えますが、フェイスブックもアプリ配信や課金の仕組みが反競争的だとしてアップルを訴えた人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピック・ゲームズに対し、証拠提出などで協力する考えを示し、さらなる反撃に打って出ようとしています。アップルが課す30%の手数料に対する不服に賛同するよう、他のアプリ開発者に呼びかけ、反対勢力を大きくしていこうという動いています。
一方、アップルは、「正義は我にあり」と言わんばかりに、CEOのクック氏がソーシャルメディアの慣行を批判し、フェイスブックの名前を名指しにはしなかったにせよ、1月初旬のワシントンDC首都における暴動を誘発するような誤情報や虚偽情報の拡散による陰謀論、分断に寄与し、ソーシャルメディアの在り方、過度な個人データ収集における弊害を示唆しています。
Source: Reuters https://jp.reuters.com/article/apple-facebook-idJPKBN29X34C
両社の対立は今後も続いていくと思いますが、視点を変えて、我々個人のデータは誰が守るべきなのか、考えさせられるこの対立は、結局は、当事者である我々個人が蚊帳の外にいるような気がしてなりません。
みなさま、この「仁義なき戦い」、どう思いますか?
Epic社の訴えを一部認める形で、開発者側がPayment業者を選択できるよう判決が出ました。Apple社に対して厳しい判決ですが、プライバシーデータに対する正義はだれにあり?
https://www.theverge.com/2021/9/10/22662320/epic-apple-ruling-injunction-judge-court-app-store