Weekly Newsletter #101
VCから見る最新の気候技術 / 米国との対立が中国のイノベーションを加速する / セクション230の議論が再燃 / イーロン・マスクのTwitter買収劇
秋も深まり、ベイエリアは大分寒くなってきました。お風呂に入って温まるのが好きな我が家は、日本の両親から送られてきた「温泉の元セット(入浴剤)」に、まさに狂喜乱舞でした。今日はどの温泉に入ろうかと、毎日の楽しみが増えましたw
VCから見る最新の気候技術
シリコンバレー発のベンチャーキャピタルDCVCは多くの気候技術に投資している
マイクロ核反応路、廃水処理技術、メタン抑制、などに投資
DCVCは利益に重きを置くのが特徴(気候技術への投資なので低利益を受け入れることはしない)
シリコンバレーのベンチャー・キャピタル(VC)であるDCVCは、2011年の設立当初から気候技術に多く投資をしています。彼らの投資を少しご紹介すると、マイクロ核反応炉のオクロ(低額での核反応炉建設が可能な技術を研究)、廃水再処理の ZwitterCo (真水の使用量を減らすべく廃水再利用のための膜技術を研究)、家畜のゲップから放出されるメタンを抑制するサプリメントを開発するCH4 Global、などがあります。
気候技術への投資と聞くと少しイデオロギー的と言うか、利益度外視とまでは言わないまでも少ない利益を受け入れての投資がイメージされますが、このDCVCは違うようです。彼らは「我々の投資金は、大学の寄付金や病院を運営する慈善信託であったりするので、我々がお金を返さない限り、出資者は病院を運営出来なくなってしまう。DCVCは利益動機に重きを置いている。」と言います。この利益に重きを置くコンセプトが、DCVCが10年間の長期に渡って気候技術への投資を継続出来た理由なのかもしれません。
米国との対立が中国のイノベーションを加速する
バイデン政権、更なる半導体関連製品の輸出規制を発表
この中国包囲網が中国でのイノベーションを加速する可能性が指摘される
実際、中国ではチップ業界とバッテリー業界での投資が盛んになっている
今週7日、バイデン政権は中国への半導体関連製品の輸出規制の強化を発表しました。JPモルガンは、この米国との地政学的緊張が中国でのイノベーションを加速させる可能性がある、と言います。現在、中国では2つの分野での投資が盛んです。その1つはチップ産業であり、電気自動車やスマートフォン産業での自立を目指しています。2つめはバッテリー分野です。電気自動車の分野ではバッテリーメーカーがEV車の価格競争力の源となる、との理由からのようです。JPモルガンは、電気自動車分野、工場自動化、持続可能エネルギー分野にて、5 年から20 年後には世界の同業他社を上回る可能性が高いと述べています。
このような技術競争はある意味健全なこととも思えますが、大国間での事柄ですので単純には行かないでしょう。引き続きの注視が必要です。
セクション230の議論が再燃
<https://thehustle.co/02052020-section-230-tech/>
通信品位法の一部として知られる第230条(セクション230)への議論が再燃しそうです。以前にこのブログでも紹介しましたが、このセクション230は現在のインターネットを形作ったとも言われる26文字でして、以下のような文言となります。
No provider or user of an interactive computer service shall be treated as the publisher or speaker of any information provided by another information content provider.
双方向コンピュータサービスの事業者及びユーザは、他者が発した情報の発行者やスピーカーとして扱われる事は無い。
ざっくり言うと「GoogleやFacebook、Twitter等のプラットフォーマーは、基本、そこに掲載されるコンテンツ内容に責任を負わない」というものです。現在のInternetサービスの根幹とも言えるものでして、SNS等のPlatformを介してユーザーが双方向にコミュニケーションを取る事が出来るのも、実は、このSection 230の思想が大きく貢献しています。もしもこのSection 230が無かったら、Yelpに載ったネガティブなコメントへの店からのクレームに、Platformerが常に対応しなければなりません。恐らくはこのようなサービスは成立しなくなり、今のInternetはもっと一方的なものとなっていたでしょう。
この記事によると、テロリストのコンテンツをホストおよび推奨したとしてSNSが訴えられるべきであるか、或いはセクション230によりその訴えが棄却されるべきか、このような文脈で、来年に向けて最高裁での議論が予定されているようです。裁判の結果次第で今後のインターネットが大きく変わる可能性もありますので、しっかり成り行きを注視したいと思います。
イーロン・マスクのTwitter買収劇
イーロン・マスクが停止していたTwitterの買収を元の440億ドルで再開すると発表
資金獲得と裁判の即時停止が条件
証言台に立ちたくないイーロン・マスクの時間稼ぎとの見方も
イーロン・マスクが停止していたTwitterの買収を元の440億ドルで再開すると発表しました。買収資金を確保出来ることと、進行中の訴訟の即時停止を条件にした再提案でしたが、裁判所は10月28日まで買収を終了させることを条件にして、10月17日に予定されていた裁判を保留としたようです。一部メディアからは、この動きはイーロン・マスクの時間稼ぎと捉えられており、またTwitter社は「さらなる遅延行為」と警戒するコメントも発しています。
もう何がなんだか分からないですが、このブログでお伝えした、Twitter社の偽アカウント情報がある程度開示されたことも、今回の再提案に幾らか関係したのかもしれません。引き続き、注目です。
今週のWeekly newsletter はいかがでしたでしょうか? 皆さんからの感想やご意見をお待ちしています。Like♡ボタンを押して、友達やSNSへのシェアも宜しくお願いします。
ポッドキャストも配信していますので、ぜひお聴き下さい。