Weekly Newsletter #132
政府補助でシリコンバレーに世界最大規模のチップ研究センターが設立へ / Microsoft、データ分析サービスのFabricを発表 / 脳と脊髄インプラントで下半身麻痺の男性が歩けるように / Meta、米国へのデータ転送で13億ドルの罰金
ベイエリアはだいぶ暖かく、と言いますか暑くなってきました。先日一足先にビーチに行き、軽く泳いでみました。こちらの海水は非常に冷たく、あっという間に体が冷え切ってしまったのですが、ビーチで寝ころんでいると、あっという間に体温が戻りました。私も娘も真っ黒に焼けてしまいましたw
政府補助でシリコンバレーに世界最大規模のチップ研究センターが設立へ
半導体製造装置メーカが世界最大規模の研究センターをシリコンバレーに設立予定
アメフト場3つ分の広さ、大学・TSMC・インテル・サムスンからエンジニアが集結
40億ドルの投資には、昨年に可決したチップ・サイエンス法案の助成金も含まれれる見込み
シリコンバレーの半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズ社が、シリコンバレーに世界最大級のチップ研究施設を開設すべく、40億ドル(約5,600億円)を投じる計画であると発表しました。この研究施設には、大学機関やインテル、TSMC、サムスンなどからエンジニアを集結し、10年間で約250億ドル規模の研究活動がなされる予定とのことです。大学での研究を製品に組み込むには何年も掛かるのが通例なのですが、このような大学機関・チップメーカー・ツールベンダーの3グループが1つ屋根の下に集まることで、その時間を3分の1近くまで短縮できるはずと、アプライド社の幹部は述べています。
アメリカン・フットボール場の3倍近くの広さとなる新研究施設の開設には、昨年、米政府が可決した520億ドルのチップ・サイエンス法案の助成金も使われる模様です。先週、副大統領カマラ・ハリス氏がSunnyvaleにあるアプライド社を訪問したのが、TVニュースで大きく取り上げられていました。チップ製造をアメリカ国内で完結できるようにしよう、中国から依存してから脱却しようと言う動きですが、一方で、世界のチップ売上の3分の1を占める中国との関係を懸念する国・企業もあり、引き続き動向に注目です。
Microsoft、データ分析サービスのFabricを発表
MSがSaasベースのデータ分析サービス「Fabric」を発表
Azure Data Factory、Azure Synapse Analytics、Power BIなどの既存製品と、生成AIのバンドル
Copilotで話し言葉でデータ分析やグラフ作成、MLモデル作成などを指示できる
Mirosoftがサブスクリプションのデータ分析サービスである「Fabric」を発表しました。このサービスはAzure Data Factory、Azure Synapse Analytics、Power BIなどの既存製品をバンドルする形で提供されており、クラウドベースのデータレイクに保存された様々なデータを分析します。分析のインターフェースには生成型AI(Copilot)も利用されており、Chatで指示・質問を入力することでデータ分析やグラフ作成、MLモデルの構築も可能です。またO365とも連携しており、Chatで指示して得た分析結果やグラフをそのままExcelやPPTに組み込むこともできるとのことです。
ビジネスパーソンが日々使うO365に生成AIが組み込まれ、且つ企業ビックデータ活用も同様のインターフェースで行えるのは凄いですね。また、MS社はこのFabricをオープン志向としたいようで、自社データレイクの他にAWSやGCPのデータレイクも利用可能となるようですので、この動きはMicrosoft パートナーのDatabricksやSnowflakeのビジネスにも影響しそうです。
脳と脊髄インプラントで下半身麻痺の男性が歩けるように
脳と脊髄へのインプラントで下半身麻痺の男性の歩行能力が回復
インプラントで歩行に関連する思考を読み取り、電気信号を伝達している
思考の読み取りにはAIベースのデコーダが利用され、大きな改善があった
バイク事故で腰から下が麻痺した男性に対し、脳と脊髄の間の損傷をバイパスする「デジタルブリッジ」のためのインプラント手術が施され、結果、歩行機能が回復したとの研究結果がネイチャー誌にて発表されました。インプラントが挿入されてから 1 年以上が経過しましたが、患者は歩行能力を保持しており、また、インプラントのスイッチがオフになっているときでも松葉杖を使って歩行できるようにもなり、神経学的回復の兆候をも確認できているとのことです。研究では、患者の思考(脳内の電気信号として検出)を読み取って筋肉の動きと一致させるためのAIベースのデコーダが使用されています。このAIデコーダが一種のブレイクスルーであったようで、以前に受けていた脳への刺激処置医療時にあった違和感、これを患者は「動作に何か異質なもの、心と身体の間に異質な距離があると感じる」と表現されていたのですが、今回のインプラントにてその違和感の改善が達成できたようであり、「以前は(外的)刺激が私をコントロールしたが、今は私が刺激(体の動き)をコントロールしている」とコメントされています。
技術の進化は凄いですね。「何が脳で何がテクノロジーなのか、哲学的な境界があいまいになり続けている」と言う研究者のコメントも印象的です。
Meta、米国へのデータ転送で13億ドルの罰金
Metaが米国へのデータ転送で13億ドルの罰金を課せられる
この罰金により、米国内の多国籍企業からのEUと米国のデータ共有協定の締結要望が高まる模様
欧州でのビジネス規模は約4分の1、Metaの動向に注目が集まる
MetaがEUの規制当局より13億ドルの罰金を課せられました。Mataは米国内のデータセンターでサービスを展開しているため、欧州ユーザーへのサービスには欧州ユーザーのデータを米国に移す必要があります。また、Metaに限らず多くの多国籍企業が、自らのビジネスを大西洋を越えるデータの流れに依存しており、今回のEUのプライバシー法であるGDPRによる罰金は、これら多国籍企業にとり大きなリスクとなりそうです。2020年に欧州の裁判所が米国とEUのデータ共有協定を破棄してい以来(米国政府がユーザー情報の引き渡しを強制できる「外国情報監視法第702条」をEUが懸念したため)、米国企業は法的な拠り所を無くしている状況です。そのため今回の事例により、米国とEUのデータ共有協定の再締結を望む声は高まるでしょう。
今回の罰金について、Metaは2億5500万人以上のユーザーがいるEUでのサービス提供を停止しなければならない可能性があると述べており、収益のほぼ 4分の1を占めてる欧州でのサービス状況に注目が集まります。
今回は取り上げなかったけど面白かったニュース
実はポッドキャストも細々とやっています、試しに聞いてみてください。