Weekly Newsletter #151
OpenAIが独自チップの製造を検討か?/RISC-V(チップ製造のオープンソース技術)が米中の新たな火種に?/AmazonのAIプロジェクト「Project Nile」がオンラインショッピングを変える/SNS各社が広告依存からの脱却を模索
10月に入り、ベイエリアもだいぶ秋めいてきました、朝晩はジャケットが必要なくらいです。
昨日、サンフランシスコで開催されたFleet weekイベントを見てきました。一番注目されるのが航空ショーなのですが、Blue Angelsの一糸乱れぬアクロバット飛行は圧巻でした。
OpenAIが独自チップの製造を検討か?
OpenAIが独自のAIチップの製造を検討か
世界的に不足しているチップへの対応と、Nvidiaへの依存を減らしたい意図
OpenAIのインフラを担うMicrosoftは独自AIを開発中とも言われ、両社の関係は更に微妙に
OpenAIが独自チップの製造を検討している、との報道がありました。現在、AIモデルトレーニングに必要とされるチップの不足が世界的な話題となっています。AIモデルのトレーニングに不可欠なチップとして、NvidiaのH100などが挙げられますが、多くの企業にとり、このH100は入手が困難であり、且つ、NVIDIAへの依存を憂慮するようにもなってきました。故に、Meta、Microsoft、GoogleやAmazonなどのハイテク企業は独自のチップ開発を進めるようなりました。今回、この動きにOpenAIも参戦することになるのかもですが、一方で、チップの設計と製造は簡単なことではなく、膨大な専門知識とリソースが必要であるため(ChatGPTの開発に要した5年と同程度では・・との見方あり)、このプロセスを支援するためにチップメーカーの買収も検討しているようです。
また、OpenAIは、これまでAzure上のGPUを使って開発してきため、この動きはOpenAIとMicrosoftの間に乖離があることを示すものとも捉えられています。実際、Microsoftが独自の大規模言語モデルを開発してOpenAIへの依存を減らそうとしているとの報道もあり、両社の関係は更に微妙なもととなりそうです。
RISC-V(チップ製造のオープンソース技術)が米中の新たな火種に?
RISC-Vと呼ばれるオープンソースのチップ開発技術が、新たな米中の火種となる可能性
米国によるチップ包囲網の最新版
一方で、オープン技術への規制はイノベーションの観点から間違いである、との考えも
米国内の一部議員から上がっている、チップ開発技術(RISC-V)に対する中国への制限が、米中ハイテク戦争の新たな火種となる可能性があります。RISC-Vは、AMRなどの高価な独自技術に競合するオープンソース技術であり、スマートフォンのチップから人工知能用の高度なプロセッサまで、あらゆる分野でのチップを作成出来る汎用性を持つ、と言われています。議員たちは、国家安全保障を理由に、バイデン政権にRISC-Vに関して制限を設けるよう求めています。彼らは、中国政府が米国企業間のオープンな協力文化を悪用し、これがチップ分野での米国の現在のリードを侵食し、中国の軍事近代化を助ける可能性があると懸念を表明しているようです。
RISC-Vは、カリフォルニア大学バークレー校の研究室で生まれ、国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)からの資金援助を受けて発展しました。その創始者たちは、RISC-Vをインターネットになぞらえ、無料で利用でき、世界中からの貢献を活用してイノベーションを迅速かつ安価に推進できると述べています。故に、このオープン技術への規制は、テクノロジー、リーダーシップ、イノベーション、そして雇用の観点から大きな誤りであり「とてつもない悲劇」になるとの考えもあり、今後の推移に注目です。
AmazonのAIプロジェクト「Project Nile」がオンラインショッピングを変える
Amazonが検索用チャットボットを開発中か
Amazonの検索バーに統合され、顧客からの質問に答えてくれる
AIが買い物客の好みを知っている知識豊富な店内販売員のような存在に
Amazonは、オンラインショッピングの方法を変えるため秘密のAIプロジェクト「Project Nile」を立ち上げました。このプロジェクトは、CEOのAndy Jassyを含むトップリーダーによって支援されているようです。この「Project Nile」では、チャットボットがAmazonの検索バーに統合され、顧客が商品に関する質問をすると、チャットボットが迅速に回答してくれます。例えば、「どのコーヒーメーカーを買えばいいですか?」といった質問に対して、ユーザーにオプションのリストを提示したり、製品に関するフォローアップの質問にも答えてくれます。また、個人のショッピングデータに基づいておすすめを提供することも検討されており、Amazonのある幹部は、AIが買い物客の好みを知っている知識豊富な店内販売員のような存在になってほしいと期待を寄せています。この新機能は早ければ1月にも導入される見込みとのことです。米国の消費者の60%以上がAmazonで商品検索しているので、このプロジェクトは、米国における日々の購買活動に大きな影響を与えることとなるでしょう。
「Project Nile」は、AmazonのAI価活用の最新例です。Amazonは販売者が広告で使用できる写真やビデオを生成するAIツールの開発も報じられており、AIを積極活用する同社の姿勢に注目があつまります。
SNS各社が広告依存からの脱却を模索
広告依存からの脱却を目指す、SNS各社の取り組みが活発化
Metaは月額14ドルに広告なし版、TikTokは月額4.99ドルの広告なし版を検討
欧州で施行されるプライバシー規制による影響が大きい
SNS各社の、広告依存からの脱却を目指す取り組みが注目されています。
Meta Platforms(旧Facebook)は、欧州の新法による潜在的な収益への打撃を回避するため、ヨーロッパのユーザーにFacebookとInstagramの広告なしバージョンの14ドルのサブスクリプションを提供する提案を行いました。新しい規制への対応と、個人データに基づいた広告前にユーザーの同意を求める判決を受けて、Metaは自社の広告ビジネスモデルの改革を迫られています。つまり、欧州での規制に伴う収益損失の相殺方法を検討しており、この文脈にて、サブスクリプションモデルの可能性について議論を開始したようです。
一方、TikTokも広告以外の収益源を模索しており、有料・広告なしバージョンのテストを行っていると報じられました。ユーザーには現在のパーソナライズされた広告が表示される現在の無料版バージョンと、月額4.99ドルの広告なしオプションの2つの選択肢の提供を検討中のようです。TikTokは昨年、年間広告売上高が100億ドルに達すると見込まれていますが、オンラインショッピングなど、広告だけに頼らない、収益の多様化を模索しています。
今回は取り上げなかったけど面白かったニュース
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10分程度なので、聞いてみてください。