Weekly Newsletter #158
OpenAI:CEO復帰とその舞台裏/バイナンスCEOが米国の法に違反し辞任、多額の罰金支払いへ/自動運転のクルーズ、再スタートへの動き/Nvidiaの第3四半期収益急増、中国市場への影響に警戒
先週はThanksgivingで、週の後ろ半分は休日でした。シリコンバレーのテック企業には、外国籍の方々、もしくは母国が米国ではない方々が多くいるのですが、この大型連休のタイミングで母国に帰る方が多く、付き合いのあるスタートアップのCEO達が「今週からインドで働くよ」とか「来週からヨーロッパに滞在だよ」と、この時期は地理的にもグローバルになりますw
OpenAI:CEO復帰とその舞台裏
OpenAIはCEOとしてサム・アルトマン氏の復帰を発表
アルトマン氏は復帰するも取締役就任せず、内部調査実施が合意
アルトマン氏の実績、前取締役の慎重なスタンス、投資家懸念、従業員思惑が入り混じり、今回の合意が形成された模様
先週火曜、OpenAIは、サム・アルトマン氏がCEOとして復帰することで「大筋」合意に達したと発表しました。
この発表に先立ち、投資家らは、数十億ドルの資金を調達したOpenAIを管理する同社の非営利取締役会の変更を求め訴訟も検討していたようです。また、OpenAIの約770人の従業員のうち700人以上が、取締役会が辞任してアルトマン氏を復帰させなければ辞めると脅す書簡に署名したと報じらていました。(MicrosoftもOpenAI従業員全員を雇用し、報酬は同額とすると述べていた)
この新たな状況を受け、取締役会とアルトマン氏等との交渉から生まれた今回の妥協案では、アルトマン氏と元OpenAI社長のブロックマン氏は同社に復帰するが取締役には就任しないこと、同氏を解任するきっかけとなった行為疑惑に対する内部調査を実施すること、これらが合意された模様です。また、OpenAI従業員の株式売却(860億ドル相当)も、アルトマン氏のCEO復帰を受けて軌道に戻りました。
OpenAIを強力な手法で率いたアルトマン氏、AI開発に慎重なスタンスであった前取締役、OpenAIの価値が紙屑となると困る投資家、引き続きアルトマン氏の元で働きたい(株も売りたい)従業員、各者の思惑が入り乱れて、今回の合意となったようですね。
バイナンスCEOが米国の法に違反し辞任、多額の罰金支払いへ
米司法省がバイナンスCEOのマネーロンダリング防止法違反を認めCEO辞任
43億ドルの罰金支払いで和解
経営幹部の退任もあり、米国の仮想通貨に影響を与える局面か
米司法省は、仮想通貨取引所バイナンスの共同創設者兼最高経営責任者(CEO)であるチャオ・チャンペン氏が、マネーロンダリング防止法に違反した罪を認め、CEOを辞任することを発表しました。これにより、バイナンスは2018年から続いた司法省の捜査の結果、元法務顧問や最高戦略責任者、コンプライアンス担当上級副社長など複数の経営幹部が去り、そして同社で最も影響力のある指導者を失うことになりました。
バイナンスは捜査を受けながらも、今回の和解により刑事告訴に有罪を認め、43億ドルの罰金を支払うことが合意されました。これにより、司法省、商品先物取引委員会、財務省などの様々な機関によるバイナンスに対する長期にわたる捜査が終結する見通しとなります。ただし、証券取引委員会(SEC)に対する訴訟は引き続き進行中であり、今回の和解には含まれていません。
FTXの創設者サム・バンクマン・フリード氏に続き、バイナンス創設者も退場となりました。この動きを、米国における暗号通貨の終わりと見るのか、或いは新たな始まりを迎えているのか、判断が難しいですね。
自動運転のクルーズ、再スタートへの動き
カリフォルニア州での公道走行禁止を受け、単一都市でのサービス再開を発表
CEOと最高製品責任者が辞任する混乱の中、GMは引き続きクルーズに注力
2030年までに500億ドルの収益を見込むも、過去の損失や財務の懸念が影響す、再スタートへの道は難航
先月の事故を受け、カリフォルニア州で自動運転車の公道走行を禁止された「クルーズ」が、小規模な形での再スタートを計画していることが明らかになりました。クルーズは先週、ロボタクシーの安全性審査を拡大すべく全ての運行を一時停止し、その後信頼の再構築を目指して単一の都市でサービスを再スタートさせ、その後拡大する戦略を発表しました。なお、この一時停止の混乱から、CEOと最高製品責任者が辞任しています。
クルーズの親会社であるGMは、今後もクルーズに注力し、「長期的には人間のドライバーが操作するためのステアリングホイールやその他の制御装置を持たずに設計された乗用車」を中心とした戦略を打ち出しています。しかし、再スタートへの道は容易ではないようです。クルーズが事業を停止する前、GMのCEOは、クルーズとその自動運転技術が2030年までに500億ドルの収益を生み出す可能性があり、ロボタクシー事業は収益を2,800億ドルに倍増させる戦略の重要な部分であると述べていましたが、一方でで、GMは第3四半期にクルーズで7億ドル以上、2016年以降では80億ドル以上の損失を出しており、財務への影響も懸念されています。
今が正念場と言えるのかもしれませんね。
Nvidiaの第3四半期収益急増、中国市場への影響に警戒
Nvidiaは第3四半期に収益181億ドルで前年比206%増を達成
主因はAI需要で、1株あたりの収益は4.02ドル。ゲームセグメントは28億6000万ドル、データセンターは予想128億2000万ドルに対して145億1000万ドル
一方、中国市場での輸出抑制規制により売上減少予想も示し、株価はわずか1%未満下落。地政学的なリスクにも警戒の声
Nvidiaは、第3四半期の収益が前年同期比206%増の181億ドルに達したことを発表しました。この成績は、主にはAI需要が牽引したものであり、同社の1株あたりの収益は4.02ドルに達しています。
第3四半期の実績は、ゲーム・セグメントの収益が28億6000万ドルと予想の27億ドルを上回り、データセンターの収益は予想の128億2000万ドルに対して145億1000万ドルとなったとのことです。また、自動車関連の収益は2億6,600万ドルと記録されました。
一方で、バイデン政権による昨今の輸出抑制規制の影響により、中国での売上高が「大幅に」減少すると予想しています。しかし、同社は他の地域での成長によってこの減少を相殺できると述べており、具体的には、Nvidiaは今四半期の売上高が230%増の200億ドルに急増すると予測しています。しかし、依然、中国市場の影響に対する警戒も示しており、それもあってか、同社の株価が火曜日の時間外取引で1%未満下落する結果となりました。
総じて、Nvidiaは引き続き急増する収益を達成していますが、中国市場における不確実性が今後の展望に影響を与える可能性は依然としてあり、同社の驚異的な成長だけではなく、地政学的なリスクにも注目が集まります。
今回は取り上げなかったけど面白かったニュース
ポッドキャスト、リニューアルしました。
今週の「今回は取り上げなかったけど面白かったニュース↑」を紹介しています。
5分程度なので、聞いてみてください。