Weekly Newsletter #160
Google、新AIモデル「Gemini」発表 - デモビデオの「編集」に批判も/AmazonがSpaceXとの契約を発表、Project Kuiper衛星を打ち上げへ/OpenAI、アルトマン氏支援のチップスタートアップと5,100万ドルの契約/タイガー・グローバルの投資先企業評価引き下げにより、投資家が紙損18%に
今週は日本からの出張者が来られまして、数件のスタートアップへの訪問と、空き時間にスタンフォード大学を案内しました。私もスタンフォード大学は久しぶりだったのですが、完全にコロナは過ぎ去り、学生たちの活気で満ち溢れていました。きっと、次のザッカーバーグのような、未来の起業家とも擦れ違っていたのだと思いますw
Google、新AIモデル「Gemini」発表 - デモビデオの「編集」に批判も
GoogleはGeminiを発表し、マルチモダリティの能力を強調するデモ動画を公開
実際のデモは編集があり、リアルタイムではなかったことが判明し、批判を浴びている
Geminiの一般提供は来年以降になる見通しで、透明性と実用性の確保が今後の課題か
今週、Googleは最新のAIモデル「Gemini」を発表し、機能のお披露目ビデオを公開しました。デモ動画は、特に「マルチモダリティ(テキスト、画像、音、などの様々な種類の入力を並行且つ総合的に分析する能力)」を活かしたビデオやオーディオ情報を処理する能力が強調され、Geminiがユーザーとの対話や視覚的な認識において、これまでのAIツールには無いほどの非常に優れたフォーマンスを見せています。例えば、Geminiがアヒルの絵を声で説明し、異なるアヒルの絵を見分ける能力などが披露されました。
しかし、実際は、デモはリアルタイムではなく、静止画像とGeminiがテキストプロンプトに反応する形で行われていた事が判明し(人手による編集があった)、批判も集めています。
Geminiは、技術の安定性やセキュリティの確保がのため、一般のクラウド顧客がGeminiのプライマリバージョンにアクセスできるのは翌年になる見通しのようです。GoogleはGeminiを通じて、AIの未来における「マルチモダリティ」の可能性を探っていますが、同時に透明性と実用性の確保が求められている状況です。今後の発展が注目されます。
AmazonがSpaceXとの契約を発表、Project Kuiper衛星を打ち上げへ
AmazonとSpaceXの契約で、Project Kuiper用の衛星をSpaceXが打ち上げることに
Amazonは衛星打ち上げにブルー・オリジンを優先していると訴えられていた
先を行くSpaceXは自社株売却(1750億ドル相当)を検討か
AmazonがSpaceXとの契約を金曜日に発表しました。この契約により、SpaceXはAmazonの衛星インターネットサービスであるProject Kuiper用の衛星を、2025年より計3回、打ち上げることになります。
Amazonは今年10月に、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス・ロケットで最初の2基の試験衛星を打ち上げ、Project KuiperをSpaceXのStarlinkに対抗する衛星インターネットサービスの立ち上げを進めていました。一方で、Amazonの株主は8月に、AmazonとベゾスがスペースXの利用を検討せずにブルー・オリジンと契約を結んだとしてAmazonとベゾスを訴えていました。この契約に関する争いが続いている中での今回のSpaceXとの契約は注目を集めそうです。
Starlinkは2019年に最初の運用衛星を打ち上げ、2022年には14億ドル以上の収益を上げています。また、今週、SpaceXは従業員やその他の投資家による自社株の売却を1,750億ドル以上の評価額で許可することを検討しており、新たな株式公開買い付けで17%の急上昇の可能性が報じられています。
衛星インターネットはSpaceX/Starlinkが、一歩も二歩も先を行っていますが、Amazonの巻き返しに期待です。
OpenAI、アルトマン氏支援のチップスタートアップと5,100万ドルの契約
OpenAIはサム・アルトマン氏支援のRain AIとの契約が判明(非拘束力の同意書)
Rain AIの低消費電力チップは環境適応型で、データセンターコスト削減を期待
ただし、現在はRain AIへの資金割り当てはない
OpenAIがサム・アルトマン氏が支援するチップ開発スタートアップであるRain AIと、5,100万ドルの契約を結んでいたことが報じられました。この契約は2019年に署名されたものであり、拘束力が無い同意書となっていました。しかし、Rain AIが2018年のシードラウンドをアルトマン氏から調達していたことから、この契約が、OpenAIの事業がCEOのサム・アルトマン氏の個人投資と絡み合っていたことを示しているとして、注目を集めています。
Rain AIのチップは「ニューロモーフィック・プロセッシング・ユニット」として知られており、人間の脳の構造からインスピレーションを得ています。このチップはNvidiaのGPUよりも消費電力が少なく、環境に基づいてAIモデルをリアルタイムで「微調整」できると主張されています。OpenAIはこのチップを活用してデータセンターのコストを削減し、また電話や時計などのデバイスへのAI導入が検討されていると伝えられています。
OpenAIは今年Rain AIのチップに資金を割り当てておらず、来年もその予定はないと発表していますが、先週、ニュースレターでお伝えしたように、サウジアラムコ所有のProsperity7が米国政府からRain AI株式の売却を強制されたこともあり、Rain AIは色々な意味で注目されている状況です。
タイガー・グローバルの投資先企業評価引き下げにより、投資家が紙損18%に
タイガー・グローバルが複数企業の評価を引き下げ、投資家は2023年9月末までに18%の紙損
主な対象は「スーパーヒューマン」(45%減)、「DuckDuckGo」(72%減)など
金利上昇でスタートアップが苦戦、ベンチャーキャピタル業界も清算に直面
タイガー・グローバル・マネジメントは、複数の投資先企業の評価額を引き下げ、これにより、投資家らは2023年9月末時点で18%の紙損を抱えることとなりました。
主な引き下げ対象として、AIを活用した電子メール会社「スーパーヒューマン」が45%、プライバシー検索エンジン・プラットフォーム「DuckDuckGo」が72%、NFT(非代替性トークン)コレクションで知られる「Bored Ape Yacht Club」の株式は69%、NFT市場「OpenSea」の株式は94%、引き下げられています。
スタートアップが金利上昇によりキャッシュフローに苦戦する中、ベンチャーキャピタル業界も清算に直面しています。報道によると、他のヘッジファンドも同様に、評価額の引き下げと株式の減額を行っています。例えば、有力ファンドの1つである「コートゥ・マネジメント」も、OpenSeaの社内評価額を90%引き下げ、他にも「Calendly」と「Notion」の株式を減額しています。
タイガー・グローバル・マネジメントは、2022年12月に記録した(管理手数料を除いた)20%の損失からわずかに改善している状況ではありますが、引き続き厳しい市況に直面しているようです。
今回は取り上げなかったけど面白かったニュース
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今週の「今回は取り上げなかったけど面白かったニュース↑」を紹介しています。
5分程度なので、聞いてみてください。