Weekly Newsletter #171
X、スマートテレビで長編動画アプリを来週にもリリース/Salesforce、生成AI開発者向けクラウドサービスTogetter AIに1億600万ドル投資/テレグラム、来年の黒字化目指しIPOを検討/スペースX、スターシップ3回目の打ち上げ試験で通信途絶も主要目標達成
今週は、暖かい日が数日続きました。「ベイエリアはもう春です」と言ってもいいくらいの気候となりました。土日にサンフランシスコの北に位置するPoint Reyesに出かけてきたのですが、海岸沿いの丘には花がちらほらと咲き始め、カリフィルニア州花のポピーも綺麗なオレンジ色で咲いていました。このオレンジの花を見ると、カリフィルニアに春が来たな、と感じます。
X、スマートテレビで長編動画アプリを来週にもリリース
Xがスマートテレビ向けに長編動画アプリをリリース予定
これはXが「スーパーアプリ」へ進化する一環で、YouTubeとの競合も意識
2024年10月までには銀行口座を廃止できる決済処理メカニズムも導入する方針か
X(旧Twitter)は、早ければ来週にもアマゾンとサムスンのスマートテレビ向けに長編動画視聴アプリをリリースする計画です。このアプリの提供は、Xを「スーパーアプリ」へと進化させるマスク氏の壮大な計画の一環と見られます。
Xは既にテキストベースのプラットフォームから脱却し、「ビデオファーストのプラットフォーム」であると宣言しています。今回のアプリはユーザーに大きな画面で長いビデオも楽しんでもらおうというもので、これはYouTubeと競合することとなります。マスク氏は、将来的にはライブストリーミングプラットフォームのTwitch、暗号化メッセージングアプリのSignal、ソーシャルメディアフォーラムのRedditなどのデジタルサービスとも競合するアプリを作ること、また、ユーザが銀行口座を廃止できる決済処理メカニズムの導入を2024年10月までに導入するよう指示しています。
これらの動きは、マスク氏がXを単なるソーシャルメディアプラットフォームにとどまらず、様々なサービスを統合した「スーパーアプリ」へと進化させようとしていることの実体なのでしょう。
Salesforce、生成AI開発者向けクラウドサービスTogetter AIに1億600万ドル投資
SalesforceがTogetter AIに1億600万ドルを投資
Togetter AIはNvidia GPUアクセス(レンタル)で注目
SalesforceのAI戦略を補完か
Salesforceは、生成AIアプリケーション開発者向けクラウドサービスを提供するTogetter AIへの1億600万ドルの資金調達ラウンドを主導しました。これは、昨秋の評価額2倍となる12億5000万ドル評価で、2月時点の年間収益36倍以上に相当します。
いまだに多くの企業がNvidia GPUの確保に苦労していますが、2022年設立のTogetter AIは、NvidiaのGPUへのアクセスを提供することで人気を博しています。CEOのVipul Ved Prakash氏は、「オープンモデルやカスタマイズモデルを大規模なアプリケーションに展開したい場合、Togetter AIはデフォルトの選択肢の一つになりつつあります。」と述べています。今回の資金調達にて、コンピューティングパワー増強と、新しいモデルアーキテクチャ構築のための研究者を雇用する予定です。(現在、同社にはAIスタートアップや多国籍企業からの45,000人の登録ユーザーがいるとのことです。)
今回のSalesforceによる投資は、同社の生成AI分野への積極的な取り組みを示していると言えるでしょう。 Salesforceは、Einstein AIプラットフォームを通じて自社CRMにAI機能を組み込んでいますが、Togetter AIへの投資はGPUインフラそのものへの投資であり、同社のAIに対する包括的な取り組みに注目が集まります。
テレグラム、来年の黒字化目指しIPOを検討
テレグラムはIPOを検討し、黒字化を目指す
創業者のドゥロフ氏は独立性の維持を理由に挙げている
フルタイム従業員は50人ほどだが、世界中で重要なコミュニケーションツールとして利用
9億人のユーザーを抱えるメッセージングアプリ「テレグラム」が、来年の黒字化を目指し、IPOを検討していることが明らかになりました。創業者のドゥロフ氏は、広告とサブスクにより2年前から「数億ドル」の収益を上げている、IPOの主な理由は独立性の維持である、と述べています。
フルタイム従業員がわずか約50人のテレグラムは、世界中で爆発的に人気が高まっており、政府や役人にとっての重要なコミュニケーションツールとしても利用されるようになりました。しかし、犯罪利用や過激派コンテンツが依然として懸念されています。ドゥロフ氏自身は言論の自由の擁護者としても知られ、それ故に、2013年にテレグラムを設立した後、ロシア政府の圧力を受け、1年後にロシアから逃亡した過去を持ちます。
世界的な選挙が予定される中、同社はモデレーションプロセスの改善とAIメカニズムの導入も計画しているとのことです。しかし、ドゥロフ氏は言論の自由を重視し、「越えてはならない一線を越えない限り、人々の自己表現方法を取り締まるべきではない。然もなくば、我々は直ぐに権威主義に堕落してしまう。」とも語っていました。彼の過去を鑑みると、中々ずっしりと来る言葉ですね。
スペースX、スターシップ3回目の打ち上げ試験で通信途絶も主要目標達成
スペースXがスターシップの3回目の打ち上げ試験を実施
通信途絶の課題を残しつつも、長距離宇宙旅行に向けた重要な技術を実証
次回の試験飛行に向けて改良を進める
スペースXは木曜日、大型宇宙船「スターシップ」とスーパー・ヘビー・ブースターロケットの3回目の打ち上げ試験を実施しました。スターシップは約1時間の準軌道飛行と大気圏再突入に成功しましたが、インド洋での着水予定地点に近づいた際に通信途絶となり、行方不明となりました。
スペースXのダン・フット氏は、「船が行方不明になったため今日の着水は中止となったが、今回私たちがどれだけ前進したかを見ると信じられないほどだ」と述べ、次の3つの主要な目的を達成したことを強調しました。
1つは「最長の試験飛行」であり、月や火星への有人飛行を目指すロケットからロケットへの燃料補給技術の実現に向けて重要な一歩となります。2つ目は 「宇宙空間でのエンジンの再点火」テストにに成功したこと、これは、長距離宇宙旅行における軌道修正や着陸などの際に必要な技術です。そして3つ目は、将来的に衛星などの貨物を宇宙空間へ放出するために必要な「ペイロードドアの開閉」テストにも成功した点です。
今回の試験飛行は、通信途絶という課題を残したものの、スペースXにとって大きな前進となりました。同社は次回の試験飛行に向けてさらなる改良を進めていくのでしょう。
今回は取り上げなかったけど面白かったニュース