Weekly Newsletter #173
イーロン・マスク、 Neuralink で「不死」を追求?/FTX創設者に25年の懲役刑、110億ドルの資産没収も/Google共同創設者、OpenAIへ移籍予定の社員を引き留める/Apple、中国市場向けAI搭載で百度と協議開始
日本への帰任が決まりました。来月に日本に戻ります。
このニュースレターは前任のShigeさんから引き継ぎ、45号〜173号までの計129つのニュースレターを担当させていただきました。その間、パンデミックあり、戦争もあり、本当に色々なことがあったのですが、激動の時代にある「シリコンバレーの今」を週次でお伝えしてきました。少しでも、皆様のお役に立てていたのであれば嬉しいです。
と言う事で、私のNewsletterは今週が最後です。今まで、ありがとうございました、バイバイ!!
イーロン・マスク、 Neuralink で「不死」を追求?
イーロン・マスク率いるNeuralinkが四肢麻痺患者の思考でPCカーソルを操作する動画をリリース
マスク氏はSF小説「ザ・カルチャー」に登場する「ニューラル・レース」に言及し、永遠の命を可能にする脳と記憶の保存の可能性に言及
先週、イーロン・マスク氏率いるNeuralinkは、四肢麻痺の患者が思考でPCカーソルを操作しチェスをする動画を公開し、大きな注目を集めました。これは、脳とコンピュータを繋ぐ革新的な技術の実現に向けた大きな一歩と言えるでしょう。
マスク氏は、Neuralinkのデバイスが将来的には視覚障害者の視力回復、神経疾患の治療、さらには別の現実を体験する可能性を示唆しています。インタビューの中で、マスク氏はSF小説「ザ・カルチャー」に登場する「ニューラル・レース」という装置(幼い頃から人間に埋め込まれ、通信やマシンとのインターフェースだけでなく、記憶の保存にも使用される)に言及して、「ニューラル・レースがあれば、すべての記憶と脳の状態を保存することができるはずで、肉体が死んでも、別の肉体に記憶と脳を移植することで、永遠に生き続けることが可能になるはずだ。それは時間はかかるものの、間違いなく物理的に可能だ」と語っていました。
天才の考えることは凄いですね。
FTX創設者に25年の懲役刑、110億ドルの資産没収も
FTXの創設者、バンクマン・フリード氏に25年の懲役刑を宣告
110億ドルの資産も没収
FTXで80億ドルの盗みを認め、110年の懲役が最高刑であった
仮想通貨交換所FTXの創設者であるバンクマン・フリード氏が、顧客や投資家を騙した罪に問われ懲役25年の判決を受けました。これは、連邦検察が求刑していた40年から50年よりは短かったのですが、弁護側が主張した懲役6年半よりもはるかに重い刑となりました。フリード氏には約110億ドルの資産の没収も命じられています。
彼は自身が運営する仮想通貨取引所FTXの顧客から80億ドルを盗んだ罪で有罪判決を受け、最高で110年の懲役刑に直面していました。量刑前、フリード氏は自らの行いを謝罪し、FTXのトップとしていくつかの「間違った決断」をしたことを認めたようです。しかし、判事は被告の極度のリスク志向を指摘し、「この男は将来、非常に悪いことをする立場になるリスクがある」と述べていました。フリード氏の刑期は、近年ホワイトカラー犯罪の被告に課せられたものの中で最も長いものの一つとなるでしょう。(血液検査の新興企業セラノスで投資家を詐欺したエリザベス・ホームズ氏は、2022年に懲役11年3か月を言い渡されています。)
記事の最後にあった、彼の言葉「At the end of the day, my useful life is probably over now(結局のところ、自分の意義のある人生は、多分、今、終わったんだな。)」が、なんとも切ないですね。
Google共同創設者、OpenAIへ移籍予定の社員を引き留める
Googleの共同創設者サーゲイ・ブリン氏がOpenAIへの移籍を検討する社員を説得、残留へ
ビッグテック企業間の激しいAI人材獲得競争を示す出来事
MetaのCEOはNvidiaのH100チップの保有数をアピールし、個人メールでAI研究者をハイヤリングしている。
Googleの共同創設者であるサーゲイ・ブリン氏が、OpenAIへの移籍を計画していたGoogle社員に電話をかけ、説得によりGoogleに残留することを決意させたと報道されました。給与の高さに加え、ブリン氏の熱意が社員の心を動かしたようでして、同従業員は Google に残ることを決意したそうです。
これはAI人材獲得競争が激化するビッグテック企業間の現状を象徴する出来事、とも言えるでしょう。AI人材は限られており、高度なスキルを持つ人材に対する需要は、かつてないほど高まっています。故に、各社は独自の戦略で優秀な人材の獲得に力を入れています。MetaのCEO Mark Zuckerberg氏は、GoogleのDeepMindのAI研究者に個人メールを送信してハイヤリングしているそうです。同社が人気の高いNvidiaのH100チップを大量に保有していることをアピールしており、AI人材獲得競争はますます激化していくことが予想されます。
それにしても、NvidiaのH100チップの保有数がAI人材獲得の武器になるのも、凄い話ですね。
Apple、中国市場向けAI搭載で百度と協議開始
Apple、中国版AIは百度と協議、サムスンは中国版スマホでBaidu採用
中国は最大市場だがHuaweiなど競争激化、Appleは中国データセンターに顧客データ保存
自社開発AIはSiriなど基本機能、画像/テキスト生成は外部AIと連携か
Appleが、中国市場向けの自社デバイスに搭載するAI機能について、中国のAI大手、Baidu(百度)と協議を開始したようです。中国政府は、国内で販売されるAIモデルを厳選していまして、事実上、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなど主要な生成AIモデルは、中国国内では使用できません。(その為、Appleのライバルであるサムスンは、最新スマホで、中国以外ではGeminiを使い、中国ではBaiduのErnieを使っている。)Appleにとり中国は最大の海外市場ですが、Huaweiなど中国国内のライバルとの競争が激化しています。Appleはすでに、中国のデータセンターに顧客データを保存するなど、中国政府の規制に対応しており、今回の百度との協議も、この流れに沿ったものと見られます。
また、AppleはiPhoneでのAIモデルのライセンス供与について、Googleとも個別に協議しているようです。勿論、Appleも自社でAIを開発していますが、それらは主にSiriなどの基本的な機能に利用されています。画像やテキスト生成など、より複雑なAI機能を提供するためには、外部パートナーとの連携を必要としているようです。
Appleの生成AI戦略は、現実的なビジネスに即しているようですね。
今回は取り上げなかったけど面白かったニュース