Weekly newsletter #18
2/12頃からアメリカのほぼ全域で記録的な大寒波が襲っています。幸いカリフォルニア州はあまり影響を受けていませんが、南部のテキサス州では例年2月の平均気温が15℃前後に対して、最大−10℃以下を観測しており、2/14には非常事態宣言が発令されました。凍結による水道管破裂や大規模な停電が発生しており、停電は400万世帯が影響を受けました。
注目したのは、SNSで拡散されていた風力発電が凍結により停止したという写真(上)です。また、テキサス州知事などが太陽光発電や風力発電が停止したために大規模な停電が発生していると発言しました。風力発電はヨーロッパなどの結構寒い地域でも稼働しているし、寒さで停止してしまうんだ?とちょっと驚いたのですが、やはり事実は大きく異なりました。
拡散された映像は、2014年にスウェーデンで撮影されたもので、ヘリコプター会社が除氷作業の様子を記録したものでした。しかも、実際には冬季のテキサスにおける風力による電力供給は全体のわずか7%程度だということです。これで大停電など起こるはずはありません。また、テキサス州はシェールガス・オイルの世界最大の産出量を誇っていることを忘れてはなりません。今回の大規模停電の主な原因は、電力供給の約80%を占める化石燃料のパイプラインやバルブの凍結、故障が発生し、暖房用の需要に電力供給が追いつかなかったことが原因です。
テキサス州知事の発言は何だったのでしょう。大統領選挙時の混乱を思い出して欲しいのですが、テキサス州は共和党が支持母体であり、知事も共和党出身です。天然ガスや石炭などの天然資源が豊富な州でもあることから、民主党のグリーンニューディール政策に批判的な立場を取っています。化石燃料を減らし、再生可能エネルギーを増やしていくことが脅威であると考え、太陽光や風力発電に対して批判的なイメージを植え付けようとしたのではないかと思われます。
さらに、この大規模停電には興味深い背景がありました。米国の電力網は大きく3つのグリッド(下図) で構成されており、テキサスだけが独自の電力グリッドを構成していました。なんと他の地域からほぼ隔離されているような状態で、歴史的に連邦政府からの規制を回避する形で出来上がったようです。つまり、技術的な問題ではなく、政治的な理由で独立した電力グリッドが構成されており、今回のような緊急時においても他の電力グリッドから配電されることがなかったということです。テキサスには、新エネルギー関連のスタートアップ企業が多い印象でしたが、早くから電力自由化を進め、発送電分離や電力小売りなどの新規参入障壁を低くできている背景には、このような理由があることを初めて知りました。
今まさにシリコンバレーからの移転先として最も注目されているテキサス州ですが、果たして最高の終着地なのでしょうか。カリフォルニア州もまた停電の多い地域ですし、山火事や水不足、高い生活費や高税率など、決して移転を引き留めさせるだけの好材料が豊富にある訳ではありませんが。
NASAの「パーサヴィアランス」探査機は、火星の地表に着陸して最初の画像を持ち帰る
2/18、NASAの探査機が火星地表に無事着陸し、歓喜するNASAの職員たちの映像に感動させられる。しかし、米国だけではなく、2/9にアラブ首長国連邦の探査衛星「HOPE」が火星の周回軌道に到達している。HOPEは種子島宇宙センターよりH2Aロケットで発射されたものだ。中国の「天問1号」も2/10に周回軌道に入っており、5月には火星地表に探査機を着陸させる計画だ。これらの偉業を支えている開発者や研究者たちの事を考えずにはいられない。「パーサヴィアランス」の開発に関わった日本人がいたことも報道されていましたよね。
その日本人技術者の大丸氏がNASAジェット推進研究所に入るまでを綴ったnoteは、なかなか勇気をもらえる内容なので、是非読んでみて下さい。
日本人がNASAで働くには
https://note.com/takurodaimaru/n/n17e74fc49339
https://www.theverge.com/2021/2/19/22291412/nasa-perseverance-rover-first-images-landing-skycrane
ロンドンでのUberの損失はギグエコノミーに大きな影響を与える
英国の最高裁は5年間の法廷闘争の末、Uberのドライバーは「労働者」に分類され、最低賃金、休日手当、休憩時間などの権利を与えるよう判決を出しました。カリフォルニアでは同様の判決がでた後、判決に不服を持つUberやLyftといった企業側が提案22という修正案を提示し、大金を掛けたキャンペーンを行った末の住民投票で、再度ドライバーは「請負業者」と分類される結果になりました。しかし、今なお不満を持つ人達が労働組合を結成し、それに加わった人達を企業側が解雇するような事態も発生しており、この問題に終止符が打たれたとは思えません。益々ギグエコノミーが拡大していく中で、この雇用問題には引き続き注目していく必要があります。
Waymoがサンフランシスコでロボタクシーのテストを開始
現在アリゾナ州のファニックスという地域で、試験的に商用運行されているAlphabet配下のWaymoによる自動運転タクシー。いよいよサンフランシスコでも試験運用が始まると思ったのですが、従業員に限定した運用でした。しかし、COVID-19の影響もあってか規制緩和が加速してきているように感じます。我々が無人の自動運転タクシーに乗れる日も近いかもしれません。
https://venturebeat.com/2021/02/17/waymo-begins-robo-taxi-tests-in-san-francisco/
Palo Alto Networksは、DevOpsセキュリティスタートアップのBridgecrewを1億5600万ドルで買収
PaloAltoのこの手の買収は珍しいことではありませんが、DevOpsセキュリティに焦点が当たっている点には注目しておきたい。ローコード/ノーコードに関するソフトウェア開発が注目されているように、あらゆる企業が自らクラウド上でSaaSサービスを世に送り出す時代において、DevOps分野におけるセキュリティの重要性は増していくということなのでしょう。
僕がWinny開発者「金子勇」氏がビットコイン開発者「サトシナカモト」であると確信している理由
イーロンマスクの発言などの影響もあり、高騰を続けているビットコインですが、それを作り出した「サトシナカモト」とは一体誰なのか?未だに様々な憶測がありますが、シリコンバレーの日本人企業家の考察ブログがなかなか面白いのでどうぞ。
https://lifeforearth.com/?p=4230