Weekly Newsletter #191
テレグラムのCEOが逮捕される / Apple, Microsoft, NvidiがOpenAIの資金調達ラウンドに参加か / Amazonのリーク文書から、顧客がAIモデルやサービスを購入する前に考慮する9つの主な要因が明らかに
気がつけばもう9月。シリコンバレーはすっかり涼しくなってきて、特に朝は肌寒いぐらいの気温になってきました。みなさんは秋といえば食欲の秋でしょうか?読書の秋でしょうか?私はスポーツが好きで、特に走るのが好きです。
写真はサンタローザ (ワインが有名) で開催されたマラソン大会に参加したときのものです。涼しくて、ロードもほぼフラットで、とても走りやすいレースでした。参加賞はワイン1本、ワインキャップつきのメダル、そしてレース後に飲めるワイン(ビールも選べます)と、ワインづくしでした!
テレグラムのCEOが逮捕される
最初の記事はテレグラムのCEOがフランスで逮捕されたという記事の紹介です。
テレグラムは匿名性の高いチャットアプリとして人気があり、運営はアラブ首長国連邦(UAE)で行われています。ユーザーデータをいかなる当局にも共有しないと主張しているため、言論の自由を擁護する人々や団体に支持されている一方、残念ながらその匿名性の高さゆえに犯罪者への連絡手段に利用されることも多いです。事実、ハッカー集団も連絡先としてTelegramを公開しています (下記、画像を参照ください)。
テレグラムのCEOであるパベル・ドゥーロフ氏は『テレグラムが児童ポルノ、違法薬物、ハッキングソフトウェアの配布に加担していた』という容疑で正式に起訴されました。これはパリ近郊でドゥーロフ氏が逮捕された後に提起されたもので、同氏は500万ユーロの保釈金を支払った後に釈放されています。
なお、テレグラムはロシアで大変人気があり、実際、ロシアの報道官は「我々はドゥーロフ氏をロシア国民とみなしており、可能な限り支援を提供できるよう準備している」と、述べています (ドゥーロフ氏はロシア生まれ、現在はフランスとアラブ首長国連邦の国籍を持っている)。
"We consider him a Russian citizen and as much as possible we will be ready to provide assistance."
なお、ハッカー集団への連絡先はテレグラム以外にもX(旧Twitter)が多く利用されており、今回の逮捕を受けて、ひょっとするとX側にテレグラムから流れてくる可能性もありそうです。
Apple, Microsoft, NvidiaがOpenAIの資金調達ラウンドに参加か
つづいて絶好調のOpenAIがさらに資金調達を広げる可能性があるという報道の紹介です。
Bloombergの報道によれば、OpenAIの次回の資金調達ラウンドは約10億ドルを投資するThrive Capitalが主導するとのことです。これにNvidiaも1億ドルの投資を検討しているほか、MicrosoftとAppleも参加する予定とのことです。
もしこの話し合いが実現すれば、Apple、Microsoft、NvidiaのTOP3社がすべてChatGPTを開発したOpenAIを支援するということになります。
この最大手3社とOpenAIとの関係性を整理してみました。
Apple:OpenAIと提携し、Apple Intelligenceプラットフォームを通じて、ChatGPTを同社のデバイスとSiriに導入
(ちょうど本日実施されたApple Eventで、Apple Intelligenceが10月より英語版、来年から日本を含む多言語対応が発表されていましたね)Microsoft:2019年以降、約130億ドルを投資し、すでにOpenAIの49%を所有
Nvidia:OpenAIの主要サプライヤーであり、AIサービスを動かすチップをOpenAIに提供
AIがスタートアップにおける重要な位置にあることを裏付ける結果となりました。今後もさまざまなスタートアップがAIでの資金調達を狙って参入してくることでしょう。
Amazonのリーク文書から、顧客がAIモデルやサービスを購入する前に考慮する9つの主な要因が明らかに
最後は、AmazonのAI戦略についてです。
AmazonはOpenAIと競合相手になっている大手の一つですが、AIの販売については苦労しているようでして、Business Insiderが入手した情報によると、AmazonがリリースしたAmazon Qはまだ課題が多くあり、MicrosoftのAI ”Copilot”と現地時点では機能差があり、顧客を奪われる懸念があるそうです。
ただ、Business Insiderが入手した別のAmazon内部情報によると、Amazonの戦略としては単なるチャットボットとして対抗するのではなく、AWSを含むインフラとAIサービス全体をとらえてAmazonのAIの強さをアピールする方向のようです。具体的には、顧客がAIモデルやサービスを購入する際には、以下の9つの要因があり、AIサービスの構築やカスタマイズにおけるAWSの使いやすさや、堅牢なセキュリティとプライバシー機能などを含めて提案すべきとガイドラインが作成されているようです。
カスタマイズ:特定の要件(モデルの出力スタイルなど)に合わせてAIモデルを調整する能力
パーソナライズ:社内データを使用してAIモデルの出力をより適切かつカスタマイズされたものにする能力(RAGを使った微調整など)
正確性:生成された出力が目的とどの程度一致しているか
セキュリティ:データおよびプライバシー保護のための適切な措置の実施
モニタリング:出力品質におけるドリフト、バイアス、劣化などの問題を特定する能力
コスト:初期投資およびトレーニング、展開、メンテナンス、インフラに関連する継続的な費用を含む総費用
使いやすさ:モデルの操作性、統合能力、サポートの可用性
責任あるAI:モデルの倫理ガイドラインへの準拠、バイアスへの対応、出力に対する説明の提供、誤用に対する安全対策の組み込み
革新性:サービスプロバイダーが他社と比較して革新者として認識されている度合い
パブリッククラウドにおけるAWSのシェアは約30%と世界でもっとも大きなシェアを有しています。そのため、AWSの販売ガイドラインでも、AWSの営業担当者は、AIサービスを構築するために必要な基本モデルとクラウドインフラストラクチャに重点を置いて提案を行うよう指示されているようです。これは、AWSのコアの強みはクラウドインフラストラクチャにあり、消費者向けAIチャットボットにはないことの裏付けと考えられます。
とはいえ、AmazonもChatGPT対抗の製品も開発しているので、ますます競争は激化していきそうです。
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