Weekly newsletter #29
バイデン政権は、今から約2か月後の7月4日(独立記念日)までにアメリカの成人70%(1億6,000万人)に1回以上のCOVID-19ワクチンの接種を実現しようとしています。現在、1億4,750万人以上が1回以上のワクチン接種を受けており、全人口の44%、18歳以上の成人では56%に相当する。この数字を見る限り、決して達成不可能な目標ではないように感じる。しかし、4月中旬以降のワクチン接種のペースは明らかに減速しているらしい。とはいえ、ピーク時で1日平均330万人超、現在でも228万人が接種しているという。一方、横浜市のワクチン予約システムが50分でダウンし、2,588人しか予約できなかったという日本のニュースを聞くとかなり残念な気持ちになってしまいます。
さて、このようにすごい勢いでパンデミックからの正常化を目指している米国ですが、先週お伝えしたようにGAFAMは好決算、今週はNYダウ平均株価は史上最高値を更新という状況になっています。
そしてもう一つ、スタートアップ企業のIPO件数がすごいことになっています。まず、2020年のIPO件数は年間480件で、2000年代に入ってから最高の件数でした。そして、2021年は1月〜5月頭までの約4ヶ月間で既に456社がIPOを果たしています。4月にIPO件数は減ったものの昨年の件数を超えることは間違いないでしょう。
これだけIPOが多いのは、SPAC(特別買収目的会社)によるものだと容易に想像ができますが、SPACが過熱気味だとして米国証券取引委員会(SEC)は、ワラント(新株引受権)への会計ルールを変更して、負債とみなす可能性があるとガイダンスを出した。SPACは、通常のIPOよりも煩雑な手続きや規制当局の審査を回避して上場できるメリットがあったが、このルール変更により、上場予定企業は財務報告書の見直しを迫られており、4月にIPO件数が減少しているのはこの影響だと思われる。今後さらにSPACの規制強化が懸念されており、投資熱や起業熱が減退しないことを祈るばかりです。
https://stockanalysis.com/ipos/statistics/
Dfinity がついに「Internet Computer」をリリース
Dfinityとは、2015年にDominicWilliams氏によって考案されたブロックチェーンを使った分散型クラウドコンピューティング・プラットフォームを提供しようという非常に野心的なプロジェクトです。一見すると誇大妄想とも取られかねない事業内容にも関わらず、Andreessen Horowitzなどの著名なVCから1億6000万ドル以上の資金を調達しています。懐疑的な見方もありましたが、今週5/7に核となる「Internet Computer」がリリースされたことで、ブロックチェーン界隈はかなりざわついています。
分散型アプリケーション実行環境という点でイーサリアム(Ethereum)と比較されがちですが、DfinityはAWSなどのクラウドプラットフォーマに支配された環境から独立した世界を構築することを目指している。まず、世界中の48のデータセンターで1,300ノードを実行し、年末までに123のデータセンターで4,300ノードを実行する予定だという。独立したデータセンターは、ネットワークガバナンス、コンピューティング能力やホスティングへの貢献によって、ICPトークンで報酬を受け取って運営されます。つまり、特定のクラウドプラットフォーマに依存することなく、ネットワーク上の任意のサーバー上どこでもソフトウェアを作成、実行できるようになり、実質的に誰も所有も制御もしないアプリが存在することになります。さらに、データを収集して広告主などに販売することもできなくなるため、個人データの所有権は個人に帰属することになります。
また、ブロックチェーンベースのアプリケーションは、処理速度に課題がありましたが、DfinityではMotokoという言語を作成し、これにより現在のWebアプリと同様のパフォーマンスを実現しています。実際にTikTokとそっくりなアプリCanCanを作成して実証しています。
ここまでの稚拙な概要説明だけでは到底理解して頂けないと思うし、正直私の理解もまだ十分でありません。新しい用語や概念も含めた解説は、ここに書き切れませんので、下記のリンク先をいくつか参照してみてください。Dfinityは、20年先までのロードマップを描いており、現状のインターネット環境を本気で変えようとしているように思えます。もしかしたら、数年後に大きな変化はこの時から始まっていたんだなと言っているかもしれません。反対に期待虚しく失敗に終わるプロジェクトかもしれません。ぜひ皆さんの目で見極めてみて下さい。また、この分野に詳しい方は、ぜひコメントください。
・分散型クラウドコンピューティングプラットフォームDFINITY(日本語解説)
・Dfinity (ICP) Review : Blockchain Based Cloud Computing
・What Is Internet Computer (ICP)?
・Internet Computerのネットワーク神経系、ニューロン、ICPトークンを理解する
・DFINITY Foundation 公式サイト
・Announcing the Internet Computer “Mainnet” and a 20-Year Roadmap
(DominicWilliams氏が語る20年のロードマップ:とてつもない長文です)
https://mashable.com/article/dfinity-internet-computer/
IBMが世界初の2nmチップを開発
IBMは、2ナノメートル(nm)のナノシート技術に基づいた世界初のチップを発表。最新の7nmチップよりもパフォーマンスは45%高く、エネルギー消費は75%低く、これを使えば、スマホのバッテリー寿命は4倍になり、4日に1回の充電で済むという。
ところで、IBMって半導体まだやってたんだっけ?と感じた方も多いと思いますが、2014年にAMD系のGlobalFoundriesに事業売却をして半導体事業からは撤退していましたが、半導体技術の基礎研究は継続してたんですね。サムスンやIntelと協力関係にもあるようです。現在、半導体製造のトップを走る台湾のTSMCは、主流の7nmから5nm(AppleのM1チップなど)に移行しており、3nmの設計も始まっていると言われる。ムーアの法則は終焉したと言われて久しいですが、半導体開発は国家の安全保障上の問題としても改めて注力されていくでしょう。
https://techxplore.com/news/2021-05-ibm-unveils-world-nanometer-chip.html
Twitterはお気に入りアカウントに送金する「Tip Jar」を開始
Twitterのユーザーは、素晴らしいツイートをするお気に入りのアカウントに対して、直接送金(いわゆる投げ銭)できるTip Jarという新機能を追加しました。Tip Jarは、Bandcamp、Cash App、Patreon、Paypal、Venmoなどの様々な支払い方法をサポート。現時点では、一部のクリエイター、ジャーナリスト、非営利団体のみが利用可能です。
これが、わざわざ取り上げるほどのニュースなのかと思われるかもしれませんが、クリエイターエコノミーの文脈で考えると、今後さらにこのような動きが加速するのではないかと感じています。このニュースレターのプラットフォームであるSubstackでは、会社や組織に所属しないジャーナリストが有料記事を配信して生計を立てていたりします。最近話題のNFT(非代替性トークン)を使えば、誰もが創造的な価値提供と収益化が可能です。トップYouTuberばかりが話題になりますが、もっと裾野が広がって一般化していくのではないでしょうか。
https://www.theverge.com/2021/5/6/22423583/twitter-tip-jar-feature-sending-money-venmo-cashapp
Appleのレーザー企業への資金提供は、ARの拡大を意味する
Appleは、大手レーザー機器メーカーのII-VI社に対して4億1,000万ドルの資金投入を発表。II-VIの技術は、AppleのFaceIDやiPhone 12 Proなどに搭載されているLiDARスキャナーに採用されており、AppleのAR(拡張現実)機能を実現する鍵となっている。噂されているAppleのARグラスに利用されるのか、自動車用LiDARを製造していることからApple Car(ProjectTitan)への利用を意図したものかは不明ですが、いずれにしろ興味をそそられます。