Weekly newsletter #35
今週、Juneteenth(ジューンティーンス)と呼ばれる 6月19日の「奴隷解放記念日」が、米国連邦政府の新しい祝日となりました。米国では州によって祝日が異なりますが、連邦政府としての祝日は年間11日で、新しく祝日が制定されるのは38年振りになります。では、Juneteenthとは、どんな日なのでしょうか?
1863年にエイブラハム・リンカーン大統領が奴隷解放を宣言しましたが、南北戦争の最中であったため、実質的には奴隷解放には至りませんでした。1865年に南北戦争が終結し、勝利した北軍のゴードングレンジャー将軍がテキサス州に入り、奴隷となっていた黒人たちに戦争終結と奴隷解放を伝えた日が6月19日とされ、Juneteenth と呼ばれるようになったとのことです。
その後、奴隷制度廃止後も黒人に対する人種差別が長らく続きましたが、昨年5月のジョージフロイド氏の死亡事件をきっかけに、Black Lives Matter (BLM) 運動が全世界へ広がりました。ここシリコンバレーでも、企業の要職に就いたり、起業できる黒人が極めて少ないとして、人種への偏見と差別が存在していると批判を浴び、各テック企業はこぞって6月19日を有給日にする動きがありました。そして、1年後に晴れて全米の祝日となったわけですが、偏見や差別が完全に無くなったわけではありません。
偏見や差別は、奴隷制度から始まる歴史的な問題ですが、貧困や教育、政治や政策などが大きく関わる構造的な問題だということを1年前に「13th」という映画を観て知りました。現在も、Netflixが無料でYouTubeに全編を公開しています。ご覧になっていない方は、ぜひ観ることをお薦めします。
NTIAの地図は、デジタルデバイドの実態を明らかにしました
米国商務省のNTIA(国家電気通信情報管理局)は、全米のブロードバンドの状態を示す新しいデジタルマップをリリースしました。これは、高速なインターネットにアクセスできない地域(赤い領域)の状況を示す様々なデータセットを閲覧できます。多くの地域で、FCC(連邦通信委員会)が定めている固定ブロードバンドサービスの基準である下り25Mbps /上り3Mbpsを下回る速度であることに驚きます。貧困の多い地域とブロードバンドアクセスには相関関係があるとしても、過疎地域に多額のコストを掛けてブロードバンドサービスを提供するのは困難です。バイデン政権が掲げる高速ブロードバンドを全米100%の地域に行き渡らせるインフラ整備は、そう簡単ではなさそうです。
Ciscoは、デジタルデバイド解消のため「Rural Broadband Innovation Center」を立ち上げました
Ciscoは、デジタルデバイドの解消を目的として「RuralBroadband Innovation Center」を設立。サービスプロバイダーの商業的成功と人口の少ない農村部などへのサービス提供コストのギャップを埋めることを目指して、Ciscoの新しいテクノロジーで直接体験してもらうという。
ルーター/スイッチ市場は、パンデミック前のレベルに戻ると予想
Dell'Oro Group によると、世界のサービスプロバイダーのルーター/スイッチ市場は、2021年第1四半期の収益で、前年比16%増の32億ドルに達しており、パンデミック前のレベルに回復してきている。最も回復したのは北米で、サービスプロバイダーは、昨年延期された400Gbit/s製品への移行など、重要なネットワークのアップグレードが需要を牽引している。
ビッグテックに懐疑的なリナ・カーンがFTCの議長に任命された
独占禁止法の研究者で、ビッグテックの市場支配を長年批判しているリナ・カーン氏は、FTC(米国連邦取引委員会)の新しい議長に任命されました。カーン氏は、イェール大学の学生の時に、ビッグテック企業の反競争的行動をめぐる議論を塗り替える、非常に影響力のある「Amazonの独占禁止法のパラドックス」と題した論文を発表しています。この論文では、反競争的行動の尺度として価格を用いて、ビッグテック企業とそのプラットフォームの市場支配力を測るには不十分であると主張しています。
すぐにビッグテックが解体されるようなことは難しいと思いますが、独占禁止法を巡ってしばらく攻防が続くことになるでしょう。下院では独占禁止法の改正法案が提出されており、今後の動向に注目です。
SpaceXが国防のために最新のGPS衛星を打ち上げ
SpaceXのファルコン9ロケットは、今年で19回目の打ち上げで、最新のGPS衛星を打ち上げました。最新のGPS衛星「GPSIII-SV05」は、米国宇宙軍向けにロッキードマーティンが製造したものです。GPSIIIは設計寿命は15年で、現在のGPS衛星の2倍。精度は3倍で、既存の5〜10mの精度から1〜3mに向上。信号もより強力になり、対妨信能力は8倍に向上しています。世界中の40億人を超えるユーザーに、高精度の位置情報やナビゲーション、タイミングサービスが提供されることになります。
SpaceXも国家安全保障に関わる重要なミッションにおいて、再利用ロケットが使用可能であるという道筋を示しました。
Amazonの航空機は米国郵政公社のために貨物を運びます
Amazonが保有する航空機「Amazon Air」がUSPS(米国郵政公社)の荷物を輸送しています。USPSは、FedExやUPS、他の商用航空会社にも荷物の輸送を委託していますが、Amazonの輸送量は年々増加しています。2020年5月からの1年間でAmazon Airの航空機の数は76%増加し、米国内輸送用で70機、国際輸送には4機が稼働。1日あたり平均147便で、9分半ごとに1回離陸しています。2022年末までに85機以上の航空機が飛行する。
ローコードツールにより、2024年までに技術の80%がIT以外の専門家によって構築される可能性がある
Gartner によると、ノーコードやローコードのツールが登場したことにより、2024年までにテクノロジー製品やサービスの80%がITの専門家ではない人々によって構築されると予測している。技術者ではなく、市民開発者、データサイエンティスト、そして「ビジネス・テクノロジスト」(日常業務の一環として独自の分析、プロセスオートメーション、ソリューションを修正、カスタマイズ、設定する従業員)などに技術開発の民主化が進むと予測。多くの企業がデジタル・トランスフォーメーションの導入を進めており、従来のITプロバイダーに依存していた市場に自ら参入し、競合するようになると予測している。