Weekly newsletter #43
今週発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポート(第6次評価報告書の第1作業部会「気候変動2021」)によると、温暖化のほとんどが人為的な活動によるもので、迅速かつ大規模に温室効果ガスの排出量を削減しない限り、1.5℃を超える温暖化を抑制することはできないと示しています。
IPCCは国連の組織で、報告書の執筆は世界中の科学者がボランティアで行い、あらゆる政策決定者のために科学的根拠をまとめたもので、751人の科学者が14,000以上の研究とデータソースを元に作成したものです。2019年の大気中のCO2濃度は、200万年前のどの時期よりも高く、地球の表面温度は、1970年以降過去2,000年間のどの50年よりも急速に上昇しているのは、紛れもない事実のようです。気候変動は、すでに地球上のあらゆる地域に様々な形で影響を及ぼしているという言葉も実感を伴って理解できるようになってきました。世界各地で頻発している豪雨による洪水被害、毎年記録を更新していく最高気温のニュース、乾燥と熱波による森林火災の拡大など、どれも見たことのない氷河や永久凍土が融解しているといった類の話ではなく、身近に起こっていることです。
各国がガソリン車の販売を禁止してEV車への移行を図ろうとしていますが、決してそれだけでは解決しないはずです。温室効果ガスを“抑制”するだけでなく、大気中の二酸化炭素除去や太陽光の放射抑制など、地球工学(Geoengineering)と呼ばれる積極的なアプローチが必要なようです。大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct air capture)の技術では、Carbon Engineerin社のようなスタートアップも登場しいます。CO2を吸収する作物を栽培して収穫したバイオマスから熱や電気を生産し、その過程で発生する排出物を回収・貯留するBECCS(回収・貯留付きバイオマス発電)などの技術は、まだ小規模なプロジェクトしか存在していません。そして、SRM(Solar radiation management:太陽光放射管理)と呼ばれる技術は、成層圏にエアロゾル(硫酸塩粒子)を噴霧して、太陽光を反射させて地球の気温を下げるというもので、火山噴火などの煙で太陽光が遮断されるような状態を人工的に作るというものです。さすがに環境や健康に悪い影響が出ないのかと懐疑的になってしまうような話ですが、そこまでしないと気候変動を抑えることはできないということでしょう。
今回のレポートでは、気候システムの物理科学的根拠を示していましたが、第2版では「気候変動が人間や他の生物に与える影響」、第3版では「気候変動を緩和する方法」がテーマになっているようなので、第3版で実行可能性のある踏み込んだ施策に言及されることを期待したいと思います。
・IPCCの気候レポートは、未来を選択するための最も明確なガイドブックです
・IPCC最新報告書、温暖化防止のカギは炭素除去テクノロジー
・悲惨な気候の未来に関する国連報告書で地球工学は重要な役割を示す
Salesforceがストリーミング戦争に突入
Salesforceは、ビジネス向けビデオストリーミングサービス「Salesforce+」を開始する。9月開催の年次カンファレンス「Dreamforce」で詳細は公開されるが、オリジナル番組や顧客が作成したコンテンツなどを24時間365日オンデマンドで無料提供する計画だ。既に脚本家や放送プロデューサーなど、約50名の編集担当者を採用し、自社スタジオ「Salesforce Studios」まで設立している。サービス開始時には、リーダーシップやビジネススキルに焦点を当てた6つのオリジナルシリーズ、4つのブロードキャストチャンネルをリリースし、100時間以上のコンテンツを提供するという。
リモートワークが常態化する中で、オンライン学習などのコンテンツ市場は大きく成長しており、新たにプロフェッショナルコンテンツ用のプラットフォーム構築を狙っているようだ。
NVIDIAのGTC 2021の基調講演は、CEOもキッチンもほぼ100%偽物だったと明かす
4月に開催されたNVIDIAのGTC(GPU Technology Conference)の基調講演に登場したCEOと背景のキッチンは、「NVIDIA Omniverse」を使用して作成したものだった。NVIDIA Omniverseとは、3D仮想コラボレーションとリアルタイムに物理シミュレーションを作成できるオープンプラットフォームで、恒例となったCEOのJensen Huangのキッチン前でのプレゼンに何ら違和感を持たず視聴していた多くの人達は、期せずしてその実力を見せ付けられた格好だ。
OpenAIは自然言語をコード変換するAPI「Codex」を発表
OpenAIは、自然言語をコードに変換するAIシステム「OpenAI Codex」をプライベートベータ版のAPIとしてリリース。Codexは、12以上のプログラミング言語(Python、JavaScript、Go、Perl、PHP、Ruby、Swift、TypeScript、Shellなど)を理解することができ、平易な英語で書かれたコマンドを解釈して実行することができるため、既存のアプリケーションに自然言語によるインターフェースを構築することが可能になる。Codexは、他にWordの音声インターフェースを作成することができ、ユーザーの音声コマンドでWordに命令を出すことも可能。SpotifyやGoogleカレンダーなどでもその機能をテストしているという。Codexは当初、無料で提供される予定で、ここからベータ版の入手を。
PolyNetworkから6億ドルの暗号通貨が盗まれ、返還された
分散型金融(DeFi)プラットフォームの Poly Network において、6億ドル以上のデジタルコインが盗み出され、史上最大規模の暗号通貨強盗となったが、48時間以内にほぼすべての資産が返還された。
Poly Networkは、ユーザーが異なるブロックチェーン間でトークンを転送または交換できるようにするプラットフォームです。今回のハッキングは、トークンをいつ相手に渡すかを指示するスマートコントラクトの脆弱性を悪用したことが判明。ハッカーは、「楽しみのため」にやったと言いつつも、ホワイトハットを名乗り「脆弱性を公開するため」にやったとも言い、その本心は不明だが、大金の資金洗浄が困難だと判断して資金を返還したのではないかと推測されている。
次世代ブレイン・コンピューター・インターフェースに向けて一歩前進
ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)は、脳や脊髄に損傷を受けた人が体を動かしたり、コミュニケーションを取ったりすることを支援する。現在のBCIシステムは、1つか2つのセンサーで脳内の数百の電気信号をサンプリングしており、より多くの脳細胞からデータを収集するシステムが必要だと考えられてる。今回、塩粒ほどの独立した無線マイクロスケール神経センサー「ニューログレイン」を50個使用し、ラットの神経活動を記録することを実証した。かつてないほど詳細に脳信号を記録することを可能にするという。
Qualcommとカリフォルニア大学サンディエゴ校と他の2大学が参加する専門家チームがNature Electronics誌に研究成果を発表。
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