Weekly Newsletter #86
TikTok - 全米国ユーザーのデータをOracleサーバーへ移動する意向 / カナダにて使い捨てプラスチックの使用を禁止する法案を発表 / 炭素除去は「不可欠」に - 国連気候レポート / 太陽発電・風力発電におけるAI活用の今
今、私はCollisionというテックイベント参加のためカナダのトロントに来ています。2年ぶりとなったインパーソンのカンファレンスと言うこともあり、広い会場には人がひしめき合い、会場から熱気を感じることが出来ます。このカンファレンスはEarly stageなStartupからの参加も多く、エネルギーに満ち溢れている彼らと話をするのは楽しいです。会場はほぼノーマスクでして、ようやくコロナ後となったのだな、と実感しました。
TikTok - 全米国ユーザーのデータをOracleサーバーへ移動する意向
米国内の全てのTikTokユーザーデータがOracle Cloudへと移行される
前トランプ政権時からのセキュリティーリスクが叫ばれ規制を模索していたが、政権が変わり頓挫
しかし依然としてセキュリティーリスクが懸念され、今回の処置に至ったか
ByteDance(TikTok)は、全ての米国ユーザーのデータをOracleサーバーに移動し、今後のデータも米国内のOracleサーバーに保存すると発表しました。これは現在米国及びシンガポールにあるプライベートデータセンターに保存しているデータも含まれます。今後、全ての米国ユーザーのデータはOracle Cloudへとルーティングされるとのことです。Oracleは前トランプ政権時のTikTok追求時にパートナー候補として登場しました。前政権の規制は実現されませんでしたが、ByteDanceの中国在住エンジニアがTikTokの米国ユーザーデータに繰り返しアクセスしていたとされる記事もあり、依然、セキュリティーリスクへの懸念が残っていました。
今回のOracleサーバーへのデータ移行によりTikTokのセキュリティー懸念が払拭されるのか、引き続き注目です。
カナダにて使い捨てプラスチックの使用を禁止する法案を発表
カナダにて使い捨てプラスチック製品の製造・使用を禁止する法案が発表
ビニール袋、ストロー、取り出し容器、その他の使い捨てプラスチックなどを含む主要6品目が規制対象に
このような地球環境を考える政府主体の取り組みは、今後世界中で加速か
今週月曜、カナダにて使い捨てプラスチックの使用を禁止する規制法案が発表されました。ビニール袋、ストロー、取り出し容器、その他の使い捨てプラスチックなどを含む主要6品目が規制対象となり、製造・輸入禁止が2022年の12月より開始、その1年後には販売も禁止されることとなります。「我々が日々捨てているプラスチックの僅か8%のみがリサイクルされており、年間、43000トンの使い捨てプラスチックがが水路に流れている」と連邦保健大臣がコメントしており、この法案の重要性を説明しています。
ただ、この法案は小売業への配慮もあり、小売業者は飲料容器と一緒に包装されている場合、または包装が敷地外で行われている限りは、使い捨てプラスチックストローの販売が許可されるとのことです。また、この法案にはプラスチック廃棄物の主要な発生源であるプラスチック包装が含まれていません。しかし、カナダは2030年までにプラスチック包装に少なくとも50%のリサイクル材料が含まれることを約束しています。
地球環境を考えると、我々が日々使うプラスチックの使い捨て製品が姿を消す日も近いのでしょうか。
炭素除去は「不可欠」に - 国連気候レポート
4月にリリースされた国連気候レポートには、炭素除去が「必要不可欠」であると明言されています。これは、気温2℃の上昇を防ぐには、もはや炭素の排出量を削減する取り組みだけでは十分では無く、Direct Air Captuerなどの積極的な炭素除去が必要であることを意味しています。パンデミックから復帰もあり、世界のエネルギーに関連するCO2は360億トンを超えて新記録を樹立してしまいました。報告書には、毎年数十億トンのCO2を大気から取り出すためのインフラ・システム・ポリシー作成の必要性を言及しています。炭素除去に関するポイントを以下となります。
1. 炭素除去はオプションではない
炭素除去をしない場合は1.5℃の上昇を防ぐことはほぼ不可能、2030年までに310億トンに削減する必要がある(8年で排出量をほぼ半分にする必要あり)。そのためには各国は「膨大な」レベルの炭素除去を行う必要がある。
2. 炭素除去へのポートフォーリオが必要
樹木ベースの炭素回収アプローチが現在の主流であるが植物が死んだ後に炭素は空気に戻るため、炭素を地下に閉じ込める地質学的貯蔵のようなアプローチも検討する必要あり。Direct Air Captureは永久除去可能なアプローチであるが、大量の水とエネルギーを使うため、更なる技術革新が必要。
3. 炭素除去をスケールさせるには資金と政策決定が必要
積極的に炭素を回収するアプローチは自然ベース、技術ベースとあるが、いずれもコストが課題。各国の政策が不可欠となる。
前ニュースレターでも触れましたが、炭素除去の更なる技術革新とそれを後押しする政策は、地球の為に不可欠となりました。
太陽発電・風力発電におけるAI活用の今
太陽光発電や風力発電をスケールさせる為には、エンジニアリング観点で課題がある
これらの課題に向けたAI活用が注目されている
電力会社のビジネス視点によりデータシェアが遅れていることが、AI活用における大きな課題
それを克服する転移学習に期待が寄せられる
気候目標の達成のため、太陽光発電や風力発電は注目される再生可能エネルギーでありますが、地球規模で太陽と風を利用するには未だ課題があります。風力タービンとソーラパネルは、複雑で扱いにくいエンジニアリングシステムであることが理由の1つであるようです。この記事では、この課題に対してAIがどう活用され得るかを説明しています。
研究者たちは「AIを電力生産のコンポーネントの故障予測に活用することで、再生可能エネルギーをより安価で信頼性の高いものにし、普及を加速させることが出来るはず」と考えています。農場の風力タービンとソーラーパネルには、オペレーターが発電量と健康状態をリモートで監視できるセンサーが搭載されており、それらのセンサーには振動センサー、温度センサー、加速度計、速度センサーも含まれます。過去の発電量と故障データでトレーニングされたAIモデルによりパーツの予期しない故障を予測して、オペレーターが停電に備えて定期的なメンテナンスを計画するのに役立つ、とのことです。しかし一方で、(ビジネス故の)電力業界のデータ公開の後ろ向きさが、この分野のAI活用を妨げている要因であると研究者は言います。この課題に対しては、転移学習と呼ばれる機械学習技術が注目されています。(データの隠れたパターンを特定することで、ある機械学習タスクを解決して得た知識を別の関連タスクに転送する。つまり、タービンAのモデルを異なるタービンBに転用する。)
何にしても気候変動に対処するためには、人類の叡智全体で対処する必要があります。気候変動と闘うAIに期待したいです。
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