Weekly Newsletter #89
イーロン・マスクのTwitter買収事案、ウォール街史上最大規模の法廷闘争へ / MicrosoftがNetflixの広告ビジネスを獲得 / Intel - チップの値上げを顧客に警告 / AIスタートアップのHuggingFaceが新しいAI言語モデルを発表
7月も中頃となり、ベイエリアは日に日に暑くなってきています。ビーチも人でいっぱいです。
この時期になると問題となるのが「山火事」です。もう毎年恒例となってしまいましたが今年も既に始まっており、ヨセミテ・ナショナルパーク近くで発生した山火事により、ジャイアントセコイア(とてつもなく大きな木)で有名なMariposa Groveがクローズしています。このジャイアントセコイアは本当に大きな木なのですが、実は彼らが大きくなるのには山火事も一役買っています。山火事で周りの樹々がなくなり、大きい故に生き残ったジャイアントセコイアは周辺一体の栄養を独占出来て更に大きくなる、といった具合にです。実際、多くのジャイアントセコイア木の根元表面が焼けた後で黒ずんでいます。(彼らの種子は固く山火事の熱で落ちて発芽するので、種の永続のためにも山火事が必要とも言われているそうです。)
でも最近の山火事は、ジャイアントセコイアをも焼き尽くすほどの規模であり問題となっています。樹齢千年を超える木もあるので、何とか守りたいですね。
イーロン・マスクのTwitter買収事案、ウォール街史上最大規模の法廷闘争へ
イーロン・マスクが440億ドル規模のTwitter買収の停止を発表 - Twitter社がスパムアカウント情報を開示しなかった事を理由に挙げる
Twitter社がイーロン・マスクを提訴 - スパムアカウント情報の非開示は、買収断念後に競合プラットフォームを作られるのでは・・との恐れから
Twitterウォール街史上最大規模の法廷闘争へ
先週金曜、イーロン・マスクは440億ドル規模のTwitter買収を止めると発表しました。Twitter社がスパムアカウントの情報を開示せず、それが契約に違反しているとの理由からです。そして今週の火曜、Twitter社がイーロン・マスクを提訴しました。Twitter社は、マスク氏が買収契約の多くの条項に違反していると非難しています。その1つには、お互いを誹謗しない条項がありながら、マスク氏がツイートで「ウンチマーク」を使ってバカにした、と言うのもありました。
今回の発端となったスパムアカウントの非開示については、Twitter社は「この買収を断念した後に、競合となるプラットフォームを作られる事を恐れており、マスク氏へ情報を共有しなかった」と述べています。また、Twitter社は今回の買収停止は昨今のハイテク株の下落に関連しているのでは、とも考えているようです。実際、イーロン・マスクの資産の多くを占めるテスラ株は、この買収が発表されてから30%も下落しています。
この訴訟はウォール街史上でも最大規模の訴訟となるようです。そして長い法廷闘争となる模様です。
MicrosoftがNetflixの広告ビジネスを獲得
MicrosoftがNetflixの広告技術パートナーとして選定される
Netflixは広告が入る低価格帯のサブスクの導入を発表していた
広告ビジネスの巻き返しを図るMicrosoftにとり、この獲得は大きな事柄か
MicrosoftがNetflixのオンライン広告のパートナーとして選定されました。これは広告ビジネスに再チャレンジしているMicrosoftにとり、大きな事柄となりそうです。
Netflixは広告が挿入される低価格帯のサブスク導入を発表していました。Netflixのユーザは10億を超え、平均的なユーザーは一日に3時間以上、Netflixのコンテンツを視聴していると言われています。そのため、Netflixの広告ビジネス参入は大きなポテンシャルを持つであろうと言われています。今回、この広告ビジネスの技術パートナーにMicrosoftが選ばれたのですが、その理由の大きなところは、MicrosoftがNetflixの競合にはなり得ない点が重視されたようです。GoogleもNetflixのテクノロジーパートーとなるべく活動していましたが、Googleは Youtubeを持つことから、Netflixからの選定が見送られました。
Microsoftの広告ビジネスは、Google、Meta、Amazonに次ぐ4番手であり、上位3社に大きく遅れをとっています。同社は2016年にLinkdinを300億ドルで買収し、2019年にAdtech企業のPromoteIQを買収しています。また、今年に広告ビジネスに強みのあったビデオゲーム会社Activision Blizzardの買収に合意しています。着実に布石を打っていたMicrosoftにとっては、このNetflixの獲得はひとしおでしょう。
Appleのプライバシーポリシー変更により、モバイルを主戦場にしているMeta(Facebook)は苦戦を強いられていますので、このAdtech(広告技術)分野は、まだまだ色々とありそうです。
Intel - チップの値上げを顧客に警告
Intelがチップの値上げが迫っていることを顧客に警告 - 材料と製造コストの上昇が理由
急増する需要に応えるべく、米国内にチップ工場を建設中 - 400億ドル規模
同業のTSMCとSamsungも値上げしており、様々なセグメントでの影響は必須か
Intelがチップの値上げを迫っている事を顧客に警告しました。半導体材料と製造コストが上昇していることが理由であり、今年の秋から、PC・サーバー・WiFiデバイス向けのチップの価格を引き上げる計画だと、顧客に伝えたとのことです。IntelのライバルであるTSMCとSamsungの2社も、インフレを原因として今年初めに価格を引き上げており、チップ製造を牽引する3社が、値上げをすることとなります。
世界的なチップ不足が多きな問題となっていますが、Intelは400億ドル以上を投じてオハイオ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州にチップ工場を建設し、急増する需要への準備を進めています。同社は他社向けのカスタムチップを製造する計画も進めており、2018年にTSMCに受け渡したトップチップメーカーの地位を2024年までにはそのタイトルを取り戻ることが出来る、と予測しているようです。
色々なものが高くなっていますが、この動きは影響が大きそうです。
AIスタートアップのHuggingFaceが新しいAI言語モデルを発表
多言語に対応するAIモデル「BLOOM」がリリース
英語に変換してからNLPをする従来型とは異なり、直接、母国語を使えるので注目される
GPT3などの既存NLPに対抗し得る能力であるのか、注目が集まる
AIスタートアップのHuggingFaceが、新たなAI言語モデル「BLOOM」を発表しました。このBLOOMが特徴的なのは、多言語、46の言語と13のプログラミング言語に対応している点です。現在のNLPの多くは、英語か中国語のみの対応であり、このNewsletterでもご紹介したOpenAIのGPT3も英語のみの対応でした。(ですので、私たちがAIに日本語で話したときは、それを英語に変換してからNLP処理がなされていました。)故に、このBLOOMは英語が母国語では無い人たちから注目を集めています。BLOOMはオープンソースで誰でもダウンロードして使えるのですが、コミュニティの考え方にも特徴があるようです。BLOOMのライセンスは「組織がモデルに対して持っているユースケースをある程度制御しながらも、モデルを可能な限りオープンにする」ことを謳っています。この透明性もあってか、BLOOMプロジェクトには世界中から1000人を超えるボランティアエンジニアが開発に参画しています。
今の所、残念ながら、対応言語に日本語は含まれていませんが、日本語をしっかり理解できるAIが登場するのも、もう直ぐなのかもしれません。
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