Weekly Newsletter #129
IBM - AIに人事の仕事を置き換え / GoogleのAI研究者、GoogleもOpenAIもオープンソースに飲み込まれる / AIのゴットファーザー、AIの脅威を語るためGoogleを去る / サムスンがChatGPTの使用を禁止
おはようございます!
今日からGW明けで仕事再開の方が多いかと思います。このニュースレターでテック業界のトレンドをサクッとキャッチアップしてください。ちなみに先週分はこちらです。
IBM - AIに人事の仕事を置き換え
IBMが人事の仕事をAIに置き換える構想を発表
5年間で7800人(全体の30%)
雇用レターの確認などの日常タスクがAIへ、生産性評価などは人間が
IBM CEOのArvind Krishna 氏が、人事やその他管理職などのAIに置き換え可能なポストの雇用を一時停止する予定であると語りました。主に非顧客対応の人員26000人が対象となるのですが「5年間でその30%(7800人)がAIと自動化に取って代わられることが容易にわかった」と述べています。同氏によると、雇用確認レターの提供や部署間での従業員の移動などの日常的なタスクが完全に自動化される可能性が高いとのことです。 一方で、チーム編成や生産性評価は今後 10 年間で置き換えられることはない、予想します。
IBMは先行していた顔認証技術を悪用・偏見を助長する可能性を理由に閉鎖し、マネージドインフラ部門のKyndryl Inc.やWatson Health事業の一部などの低成長の事業を売却を進め、また気象ユニットの売却も検討し、現在、事業領域のスリム化を図っています。ハイブリットクラウドへの注力が目立つIBMですが、今後のAI戦略に注目です。
GoogleのAI研究者、GoogleもOpenAIもオープンソースに飲み込まれる
Google研究者 - いずれオープンソースがAIを制すると発言
LLM LoRAによりAIトレーニングの民主化が実現されたことが主だった原因
Open陣営(Meta)とClosed陣営(OpenAIとGoogle)の戦いに発展か
Googleの研究者が、生成AIの分野でオープンソースが急激に追いついてきており、いずれGoogleもOpenAIも先頭を走ることは出来なくなるであろうと主張しています。オープンソース・コミュニティーとLLM LoRAと呼ばれるテクニックによりAI参入障壁が劇的に下がり、イノベーションが起きていると説明しています。このAIトレーニングの民主化とも呼べるトレンドに大きく貢献したLoRA:Low-Rank Adaptationと呼ばれるテクニックは、AIモデル調整時のトレーニングで必要とされるパラメータの数を減らすために使用される数学的手法なのですが(画像生成AIのStable Diffusionで利用されブレイクスルーを起こした実績あり)、このLLM LoRAにより、誰もがノートPCでLLMのチューニングが出来ようになったと言います。そして、広大なオープンソース・コミュニティーと相まって、トップ画像と記事後半の時系列にありますが、Metaが2023 年 3 月 3 日にリリースした大規模言語モデルLLaMA-13Bが、僅か3週間でVicuna-13Bへと進化し、GoogleのBardとほぼ同様、ChatGPTの92%の出力にまで成長を遂げたと説明しています。
記事ではオープンソースの重要性を説いていますが、一方でOpenAIとGoogleはクローズド ソース技術にシフトしている動きもあり、Open or Closedのどちらが世界を制するのか注目です。
AIのゴットファーザー、AIの脅威を語るためGoogleを去る
AIのゴットファーザーがAI脅威を語るためにGoogleを退社
「近い将来、(生成AIのため)人間は何が真実かわからなくなる」
「AIは分析する大量のデータから予期せぬ行動を学ぶことが多い」
現在のAI技術の基礎とも呼べる「ニューラルネットワーク - 人間の脳をモデルとしたシステム」を提唱したAIのゴットファーザーとも呼ばれるGeoffrey Hinton氏が、AIのリスクを自由に語るためにGoogleを去りました。同氏はGoogleに在籍中はGoogleや他企業を公に批判したくないとの理由から、数ヶ月前の「イーロンマスクが率いた6ヶ月間のAI開発停止を求める署名」には賛同してなかったのですが、彼の退職は昨今のAI脅威論を物語る象徴的な事柄かもしれません。同氏は、従来のAIは人間の脳に劣っていると考えていましたが、OpenAIやGoogleが生成型AIをリリースした後に考えを変え、「おそらく、これらのシステムで起こっていることは、実際には脳で起こっていることよりもはるかに優れている」、「近い将来、人々は AI によって生成された画像や動画、テキストのせいで、何が真実か分からなくなるかもしれない」と言います。また、「彼らは分析する膨大な量のデータから予期せぬ行動を学ぶことが多い」と言い、将来のAIテクノロジーが人類に脅威をもたらす可能性を危惧し、ある種の規制を求めています。
潜在的に危険な技術に対する考えを求められたとき、マンハッタン計画を率いたオッペンハイマー氏の言葉、「技術的に素晴らしいものを見出したなら、そこに行ってやってしまえ(When you see something that is technically sweet, you go ahead and do it.)」を引用して答えたこともあったそうなのですが、同氏はもう、そうは答えないのでしょうね。
サムスンがChatGPTの使用を禁止
サムスンが、従業員が機密コードをプラットフォームにアップロードしたことを発見した後にChatGPTに代表される生成型AIツールの使用を禁止しました。同社は、Google Bard や Bing などの人工知能プラットフォームに送信されたデータが外部サーバーに保存され、他のユーザーに開示される可能性があることを懸念しています。同様の動きは以前にもあり、 JPMorgan ChaseやBank of America、Citigroup Incなどの一部のウォール街の銀行は、その使用を禁止または制限しています。また、イタリアもプライバシーへの懸念から ChatGPT の使用を禁止しました(しかし、最近に方針を変更)。同社は、知的財産に関連するデータや個人データを提出しないように従業員に求め、この新しいポリシーを破ると解雇される可能性に言及しています。また、同社はドキュメントの翻訳と要約、およびソフトウェア開発のための独自の社内 AI ツールを作成しているようです。
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実はポッドキャストも細々とやっています、試しに聞いてみてください。