Weekly Newsletter #182
TikTokが米国ユーザー向けに別バージョンのレコメンデーションアルゴリズムを開発中 / Googleの検索エンジンのランキング・アルゴリズムが暴露 / ニューヨークの映画祭ではOpenAI作られたショートフィルムがプレミア上映される
普段はシリコンバレーで活動をしていますが、先週、とあるAI関連のカンファレンスに参加するためボストンに行ってきました。ボストンにはMIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学をはじめとする大学が多数存在し、また、スタートアップやビッグテック(GoogleやIBMなど)のオフィスもたくさんあります。そのため、学生と企業の間を取り持つネットワーキングも盛んに行われていて、私もCIC Global Innovation でのイベントに参加してきました。上の画像はそのときのものです。
こちらのイベントはMITが協賛し、中にはビールサーバーや食べ物も用意されていて参加費は無料、毎週木曜日に開催されています。私はマクドナルド インディアでCOOを務めていた方に招待されて入ることができました (ラッキー!)
300人ぐらい集まっていて、たくさんの学生やスタートアップのCEOとお会いすることができました。シリコンバレーもネットワーキングがすごく盛んですが、ボストンも負けないぐらいの熱量を感じることができました。
ちなみにVirtual Capitalist .com の調査によりますと、スタートアップの都市別ランキングで1位がサンフランシスコ、ボストンは6位、東京は10位にランクインしているようです。こちらはCapitalの増加、Dealの数、Exitの価値をもとに計算されています。数値には表れていませんが、ネットワーキングの熱量も少なからずこうした結果を後押ししているに違いありません。
TECHNOLOGYRanked: The Top Startup Cities Around the World
https://www.visualcapitalist.com/top-startup-cities-around-the-world/
TikTokが米国ユーザー向けに別バージョンのレコメンデーションアルゴリズムを開発中
TikTokのアルゴリズムについては以前こちらのTech Blogでも解説いたしました。ユーザーの中毒性が高くなるようなアルゴリズムを用いているという批判もTikTokは受けています。
バイデン大統領は2024年4月、TikTokの親会社であるByteDanceが9~12ヶ月以内にTikTokを売却しない限り、TikTokを禁止する法律に署名しました。
これを受けてByteDanceは、TikTokの米国ユーザー向けバージョンをリリースし、さらに別バージョンをByteDanceから独立して運営することで、禁止措置を回避しようとしているようです。
また中国側はTikTokのアルゴリズムの売却を許可しないと述べていたことから、このままTikTokが売却されることでアルゴリズムそのものが米国側に渡ってしまうことを阻止したいという狙いもありそうです。
TikTokのような巨大なSNSプラットフォームは、今後生成AIの発展に伴ってますます重要な位置になっていくでしょう。それはデータの価値がますます増大することを意味します。つまり、TikTokにアクセスするユーザーのデータがTikTok Shopなどを通じてこれまでよりも幅広く集められることで (しかもそれが中国側に渡ってしまうことで)、AmazonやGoogleといった米国のプラットフォーマーの脅威になりえるからです。今後のTikTokの動きは生成AIの動向とセットにして、要注目だと感じています。
Googleの検索エンジンのランキング・アルゴリズムが暴露
つづいてもアルゴリズムの話題です。
Googleがどのようにインターネット上の情報を整理し、検索結果を表示しているか、実はよく分かっていません (Googleは公表していない)。そのため、SEOの専門家がさまざまな工夫を凝らしてGoogleの検索上位に上がる方法を見つけ出そうとしています。もちろんアルゴリズムは時々改変されるため、ある時から検索に引っ掛からなくなってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。このGoogleの秘密のアルゴリズムが暴露された可能性があるとのことです。
この文書によってGoogleが検索アルゴリズムに使用しているデータの種類が明らかになったとされる一方、ランキングの計算方法に関してGoogleが公式に発表している内容と矛盾している点もあるということです 。そのため、公式発表とは異なった方法をGoogleは用いているのではないかと、この文書を解析したiPullRankのマイケル・キングCEOは語っています。
Googleは生成AIによる検索に今後はシフトしていくと発表しているので、これからはアルゴリズムもガラッと代わりAIが代わりにググる、といったかたちになるかもしれませんね。アルゴリズムに合わせてSEO対策を行い、検索の上位になることはたしかに重要なことだと思いますが、それに振り回されすぎず、読み手に価値のある情報を届けることで検索の上位に上がっていきたいものです。このサイトもそうなるように今後もがんばります(笑)
ニューヨークの映画祭ではOpenAI作られたショートフィルムがプレミア上映される
生成AIは主にクリエイターを中心に利用が進んでいます。今年6月にニューヨークで行われるトライベッカ映画祭ではOpenAIのSoraモデルで作成されたショートフィルムの上映会『Sora Shorts』が開催される予定です。OpenAI自らトライベッカの卒業生に対してツールの使い方をトレーニングし、テキストからビデオにAIが変換するSoraモデルの早期アクセスも許可しました。この活動に参加するため映画制作者の方々はAI契約条件に同意したとされています。
興味深いのはこちらの上映会の後にOpenAI側がディスカッションを行い、映画監督からフィードバックをもらうことで、2024年後半に公開する予定のSoraを改良していくということです。OpenAIによればSoraは複雑なシーンの物理学、因果関係、空間的なディテールを表現することにまだ弱点があり、正確なカメラの動きに関して不正確な箇所が残っているといいます。
このAIによる動画生成の市場規模は2032年までに21.7億ドルに達すると予想されています。GoogleもOpenAIに対抗してVeoをリリースし、さまざまなスタイルで1分以上の高品質な1080p動画を生成することができると発表しています。
動画に関する生成AIの進化は目覚ましいものがありますね。AIの活用は映画業界をディスラプト(破壊)するかという意見に対して、ピクサーのクリエイターであるマシュー・ルーン氏は、AIはディスラプトではなくさらに業界をさらに活性化するものだと主張していました。以前、彼自身がトイストーリーにコンピューターを利用した事例をもとに、技術は業界を破壊するのではなく効率化して改善していくものだというのが彼の主張です。今後、AIを活用してさらに面白い映画が出来上がってくるのが楽しみですね。
一方、動画のクオリティが上がるとディープフェイクと呼ばれる映像によって人を騙すテクニックも、残念ながら巧妙化していきます。ただディープフェイクに対抗する技術やスタートアップ、法整備も出てきていますので、今後の対策に期待したいと思っています。
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