Weekly Newsletter #247
AWS re:Invent 2025 参加レポート / AWS はエージェント型AIを企業の“当たり前”にしようとしている/ 何十億規模のエージェントが自律的に動く未来
こんにちは、Marvinです。2025年12月1日から12月5日まで、ラスベガスで開催された AWS re:Invent 2025 に参加してきました。re:Invent はクラウド技術を中心に AWS の最新サービスが発表される年次イベントで、近年は生成AIやそれを支えるインフラが重要なテーマとして扱われています。今年も多くの技術者・ビジネスリーダーが集まり、クラウド基盤からAI活用まで幅広い発表が続いた1週間となりました。
初日のオープニング基調講演で、Matt Garman CEOが語ったメッセージは、とてもシンプルで強力なものでした。
「AWS はいま 1,320億ドル規模まで成長していて、しかも 年間成長率20% でさらに加速している。そして次の時代を切り開くのは エージェント型AI だ。」
AIエージェントの台頭を「インターネットやクラウド以来の最も重要な技術的転換点」と位置づけ、今後は企業や産業のあらゆる領域で何十億ものエージェントが活躍する未来を描きました。AWSは、開発者が実験にかける時間とコストを限りなくゼロに近づけることで、イノベーション速度を一段と引き上げる姿勢を明確にしています。
今回のブログでは、その講演の中で特に印象に残ったポイントを整理して紹介します。その前に、先週のNewsletterを見逃してしまった方は下記からアクセス!!
Weekly Newsletter #245:AutoCon 4 現地レポート in Austin~「自動化」は終わり、「自律化(Autonomy)」と「デジタル同僚」の時代へ
AIインフラストラクチャの強化:Trainiumの進化とAI Factories
エージェント型AIの普及には、強力で効率的な計算基盤が欠かせません。AWS はこの領域に対して大きな投資を続けており、Trainium シリーズを中心としたインフラの強化を発表しました。
Trainium 3 Ultra:大幅強化された新世代チップ
一般提供が開始された Trainium 3 Ultra は、AWS 初の 3nm AI チップ を搭載しています。前世代の Trainium 2 と比較し、
計算性能は 4.4倍
メモリ帯域幅は 3.9倍
電力1MWあたりのAIトークン生成は 5倍
と大幅に向上しており、大規模なAIワークロードにも余裕を持って対応できる設計となっています。
Trainium 4:次世代に向けたさらなる強化
設計中の Trainium 4 は、Trainium 3 と比較して、
FP4性能は 6倍
メモリ帯域幅は 4倍
を目指しており、今後のエージェント時代を見据えた力強いロードマップが示されました。
AWS AI Factories:クラウド品質のAIを“専有環境”で
AI Factories は、企業が自社データセンターに Trainium Ultra や NVIDIA GPU を専有環境として配置できるサービスです。データ主権やコンプライアンス要件が厳しい業界にとって、クラウド品質のAIインフラを自社設備で利用できるというのは非常に大きな価値がありますね。
Bedrock と Nova の強化で生成AIの実用化がさらに前進
生成AIを支える基盤である Bedrock と、モデルファミリーである Nova にも多くのアップデートがありました。
Bedrock:企業での活用が急速に拡大
Amazon Bedrock はすでに 50社以上が、それぞれ1兆トークン超を処理 しており、企業の生成AI活用の中心的なサービスとして広がっています。
Nova 2 ファミリー:対応領域がさらに拡大
Nova 2 Pro
エージェント型ツール操作や指示に基づく複雑な処理に最適化されたモデル。Nova 2 AMI
テキスト・画像・動画・音声を単一モデルで扱い、テキストと画像の生成までできる
業界初の統一マルチモーダル推論モデルです。
Amazon Nova Forge:企業専用のフロンティアモデル構築へ
Nova Forge では、Amazon のデータと企業独自のデータを組み合わせ、
『ドメイン特化型のカスタムフロンティアモデル(ノヴェラ)』を構築できます。企業が自分たちの業務に最適化されたモデルを作れるという意味で、大きな可能性を感じる発表でした。
Agent Core とフロンティアエージェント:エージェント型AIの信頼性を支える技術
エージェントが企業で本格的に利用されるためには、安全性、透明性、予測可能性が非常に重要です。AWS はその基盤として Agent Core と複数のエージェントを発表しました。
Agent Core:エージェントの行動を制御し、品質を保つための基礎
Agent Core Policy
エージェントがどのツールやデータにアクセスできるかをリアルタイムで制御。自然言語でポリシーが記述でき、それが Cedar に変換されます。Agent Core Evaluations
正確性・有用性・有害性の観点からエージェントを継続的に評価し、本番前に改善できます。
3つのフロンティアエージェント
Kiro Autonomous Agent
文脈を保ちながら開発タスクを自律的に実行。Amazon 社内でも標準化が決定。AWS Security Agent
設計レビュー、脆弱性スキャン、オンデマンドペネトレーションテストを自動で実行。AWS DevOps Agent
CI/CD や観測データをもとに問題の根本原因を特定し、予防的な改善まで行います。
コアサービスのアップデートで AI 時代の開発がスムーズに
エージェント型AIの実用化を支えるために、AWS の基盤サービスにも多くの改善が加えられました。
Amazon S3 Vectors(GA):コストを最大90%削減しながらベクター検索を実現
S3 最大オブジェクトサイズを50TBに拡張
Lambda Durable Functions:長時間ワークロードに対応
EMR Serverless:ローカルストレージ管理が不要
AWS Transform Custom:コード変換を自動化
Database Savings Plans:データベースコストを大幅に削減できる料金プラン
これらのアップデートは、AIを活用するアプリケーションの開発や運用をより効率的に進めるための重要な土台となります。
今回の基調講演を通して、AWS が エージェント型AIを企業の新しい標準へと引き上げようとしている ことがはっきりと感じられました。
AIインフラ、生成AI、エージェント制御、セキュリティ、運用基盤まで、エージェント型AIを本当に“使える”形にするための準備が一気に進んでいます。
今年のre:Inventは、AWSが「エージェント型AIを企業の当たり前にする」という明確な方向性を示したイベントだったと感じます。単なる新サービスではなく、エージェントが安全に、自律的に、そして大規模に動けるようにするためのインフラ、モデル、制御基盤、運用ツールまで一気に整備された点が印象的でした。
AWSは「エージェント型AIが本当に企業で動ける世界をクラウド全体でつくる」という強い意思を打ち出しています。TrainiumやAI Factoriesによる計算基盤の強化、BedrockとNovaの進化、Agent Coreやフロンティアエージェントによる安全性の確保、さらにS3、Lambda、EMRといった基盤サービスの改善まで、すべてが“エージェント利用の壁を下げる”というひとつの戦略につながっているように思えます。
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