Weekly Newsletter #249
AIは「未来の技術」から「前提条件」へ。実装フェーズに入ったCES 2026
Marvinです。本年も宜しくお願いします。昨年に引き続き、2026年1月6日から9日まで、米国ネバダ州ラスベガスで開催された CES 2026(Consumer Electronics Show) に参加してまいりました。
CES公式の発表によると、今年のCESには 160か国以上から4,300社超の企業が出展し、来場者数はまだ公式ページでは発表されていませんが、例年通りであれば14万人規模以上かと思います。
年明け早々、世界中のテクノロジー関係者が一斉に集まるこのイベントは、その年の「技術トレンド」だけでなく、企業が何を本気で実装しようとしているのかを読み取る場でもあります。
CES 2026で強く感じた技術トレンド
CES 2026を通して、まず強く印象に残ったのは、「AIがいよいよ前提技術になった」という空気感でした。もはやAIは目玉展示の一つではなく、あらゆる製品やサービスの土台として自然に組み込まれている――そんなフェーズに入ったことを実感させられました。個人的な総括としては・・・・↓↓↓
全体トレンド総括
(1)AIの遍在化(AI Ubiquity)
AIはクラウドや研究用途に留まらず、PC、車載、家電、産業機械、エッジデバイスへと分散配置される形が標準となりつつある。
特に「オンデバイスAI」「ローカルLLM」「エッジ推論」が現実解として語られ、通信遅延・プライバシー・コストへの配慮が前提条件となっていた。
(2)Physical AIへの明確な移行
CES 2026では、AIが“考える存在”から“動く存在”へ移行したことが明確だった。
自動運転、ヒューマノイド、農業ロボット、建設機械、eVTOLなど、物理世界の制約(安全・法規・環境)を前提にしたAI設計が主流になっている。
(3)人間中心設計(Human-Centric)
AIは「人を置き換える存在」ではなく、
人の能力を補完
判断を支援
安全・安心を担保
する存在として位置付けられていた。
医療・介護・子ども見守り・労働支援といった領域で、この思想が強く表れている。
その中でも特に印象的だったのが、「フィジカルAI」です。
ドラえもんやコロ助が現実に登場するのはまだ先かもしれません。しかし、CES 2026での NVIDIA の発表は、「私たちがこれから歩いていく技術の延長線上に、確かにその未来がある」と感じさせるものでした。
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NVIDIAが再定義する「フィジカルAI」とは何か
CES 2026において、NVIDIAが示した最大のメッセージは明確でした。
それは、AIを「画面の中の知性」から、「物理世界で思考し、行動し、説明できる存在」へと進化させるという宣言です。
単にテキストや画像を生成するAIではなく、
物体は重力で落ちる
押せば動き、ぶつかれば止まる
摩擦・慣性・因果関係がある
といった人間が無意識に理解している「物理的常識」をAIが獲得し、その上で 自ら判断し、行動し、その理由を説明できる世界を目指しています。
ジェンスン・フアンCEOは、この世界を支えるために、「3つのコンピュータスタック」が必要だと整理しています。
学習するための トレーニング用コンピュータ
現実世界で動く 推論(ロボティクス)用コンピュータ
物理法則を再現する シミュレーション用コンピュータ
ロボットと自動運転車に訪れる?「ChatGPTの瞬間」
これまでフィジカルAI――つまり、ロボットや自動運転車のように現実世界で動くAIの開発には、明確な限界がありました。最大のボトルネックは、トレーニングに必要な実世界データが、圧倒的に足りないという点です。
事故寸前のケース
想定外の割り込み
極めて稀な環境条件
こうした「ロングテール」の状況は、現実世界では頻繁に集めることができません。安全の観点からも、コストの面からも、データ収集には限界がありました。
この課題に対して、CES 2026で NVIDIA が示したのが、世界基盤モデル(World Foundation Model)「Cosmos」 です。Cosmosは、単なるシミュレーターではありません。物理法則を理解したうえで、物理的に妥当な合成データを大規模に生成することができます。つまり、「現実で集められないなら、計算によって“現実に近い世界”を無限に作る」というアプローチです。
これにより、フィジカルAI開発における根本的な制約だった
「データが足りない」問題そのものが崩れ始めました。
AMDが描く「分断されないAI」——クラウドからデバイスまで
もう一人、今回のCES 2026で特に印象に残った基調講演がありました。
それが、リサ・スーCEOによるAMDの基調講演です。
多くのセッションが個別のAIモデルやデバイスの話に終始する中で、
スー氏の講演は少し異なる視点に立っていました。彼女が語っていたのは、「どれだけ性能が高いか」ではなく、
AIがどこで、どのようにつながり、ユーザーに届くのか
という全体像でした。
講演全体を通じて示されていたのは、AIを「クラウド」「エンタープライズ」「エッジ」「デバイス」と個別に捉えるのではなく、一貫した体験として提供していくという考え方でした。
AMDは、AIがどこで実行されているかを『ユーザーが意識することなく利用できる状態』を目指しており、そのためにクラウドからエッジ、デバイスまでを含む
エンドツーエンドのAI基盤を構築していく姿勢が示されていました。
これは、性能やベンチマークを強調する議論とは異なり、『最終的にユーザーにどのような価値と体験を届けるか』という視点を重視したメッセージだと受け取れます。
AIの処理場所や構成が複雑化する中で、それを前提とした上で「分断されない体験」を実現することが、今後のAI活用における重要なテーマの一つである、
という問題提起だったと言えるでしょう。
期待が現実になった一方で、残る課題
フィジカルAIや分断されないAIといった概念は、もはや構想ではなく、技術的には実装可能な段階に入りつつあります。AIは「何ができるか」を語る対象から、「どう使い、どう運用するか」を問われる存在へと変わりました。
一方で、課題が消えたわけではありません。
AIユースケースの把握や管理、説明責任、地域ごとに異なる規制への対応、そして運用を支える組織やプロセスの整備など、技術以外の論点がむしろ前面に出てきています。AIが前提技術になるほど、ガバナンスやコンプライアンスの重要性は増していきます。
これらについては、昨年から調査を続けているテーマの一つではありますが、別の機会にてご紹介できればと思います。
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