こんにちは、5月はRio がお届けします。
筆者撮影: 昨年10月にUS-101 を有人で走るOjai
シリコンバレーではWaymo のロボタクシーに、新しい顔が加わりました。
名前は Ojai 。
最近見かける頻度が多くなったと思ったら、本格的な稼働を開始したようです。
これまでWaymo といえば白いJaguar I-PACE の印象が強いのではないでしょうか?
そのJaguar I-PACEはすでに生産終了となっており、Waymo も2025年に最後の納車分を受け取っています。
今後の拡大を考えると、次の車両プラットフォームが必要だったようです。 
Waymo の車両は、Google 時代の小型自動運転車Firefly に始まり、その後はChrysler Pacifica のミニバン、そして2018年に発表されたJaguar I-PACE へと移ってきました。
2023年にはPacifica を退役させ、EV 中心のJaguar I-PACE fleet へ移行。
そして今回、Zeekr製のミニバン型EV Ojai が加わることで、Waymo はまたミニバンに戻ってきたとも言えます。 
このOjai 、実は中国のZeekr 製です。
Zeekr はGeely 傘下のEV ブランドで、GeelyはVolvo やPolestar にも関わる中国の自動車グループです。
米国では中国製コネクテッドカーへの規制(高額な関税) が強まっていますが、Waymoは中国由来の接続ソフトウェアを外し、米国側でWaymo Driver を統合することで規制対象から外れる形にしています。
つまり、車体は中国製、頭脳はWaymo製という構成です。 
さらにWaymoは、Zeekr だけでなくHyundai IONIQ 5、そしてToyota とも次世代自動運転車両の開発で協業を進めています。
Toyota との提携では、Waymo の自動運転技術とToyota の車両開発力を組み合わせ、新しい自動運転プラットフォームの検討が進められています。 
ちなみにOjai という名前は、ロサンゼルス北西にある街の名前に由来するそうです。
先週のニュースレターを見逃した方はこちら
Weekly Newsletter #266:推論専用クラウドへ流れ込む資金、米議会が進めるAI チップ輸出規制、そして脆弱性の悪用が加速する侵害分析レポートをまとめました。
Weekly Newsletter #265:AI ネットワーク企業の大型調達、AI が生成するゼロデイ、Apple とIntel の製造委託、そしてCerebras のIPO を取り上げました。
Mythos、攻めるAI の裏で進む守るAI - Anthropic が公開した脆弱性開示ダッシュボードの中身
画像の引用元: Anthropic’s coordinated vulnerability disclosure dashboard
📚 トピックのポイントを 3 行で
Anthropic がClaude Mythos でOSS の脆弱性を発見し開示する仕組みを公開
5月22日時点で281のプロジェクトから1,596件を開示し、88件にCVE/GHSA が割り当てられた
攻撃側のAI 活用と対をなす、防御側のAI 大量発見が実運用フェーズに入った
ここ数週間、このニュースレターではAI が攻撃に使われる話を何度か取り上げてきました。
先々週はAI が生成するゼロデイ、先週は脆弱性の悪用が加速しているという侵害分析レポート。
今週はその裏側、つまり防御側がAI をどう使い始めたかが見える内容をお届けします。
Anthropic が、社内のFrontier Red Team による脆弱性開示プログラムのダッシュボードを公開しました。
これはClaude Mythos Preview という研究用のモデルを使い、広く使われているOSS のコードを解析し、見つかった脆弱性を開発者に届けるという取り組みです。
手順としては、まずAI が候補を洗い出し、外部のセキュリティ企業6社が検証したうえで、CVD(Coordinated Vulnerability Disclosure: 発見した脆弱性を開発者にまず通知し、修正の猶予を与えてから公表する協調的な開示の枠組み) に沿って世に出していきます。
5月22日時点で、281のプロジェクト、1,596件の脆弱性が開示され、そのうち97件はすでに修正パッチが適用済み、88件にはCVE(Common Vulnerabilities and Exposures: 公開された脆弱性に付与される世界共通の識別番号) またはGHSA (GitHub Security Advisory: GitHub が発行する脆弱性勧告の識別子) が割り当てられています。
元をたどると、AI が出した候補は23,019件にのぼり、そこから外部レビューに回ったものを評価すると、真陽性率(実際に脆弱性だった割合) は90.8%だったといいます。
10件のうち9件以上が空振りではなかったという精度です。
注目すべき1つの点として、開示そのものよりも透明性のための仕組みが挙げられます。
Anthropic は、まだ公表していない発見についても、その指紋にあたるハッシュ値を先に台帳として記録しておく方式を取っています。
後出しで実は先に見つけていたと主張できないよう、発見した時点の証拠を残しておく仕組みです。
さらに、Claude が付けた深刻度の評価と外部企業の評価は、完全に一致したものが58.7%、1段階のずれまで含めると94.4%が一致したと報告されています。
AI の判断を鵜呑みにせず、人間の検証と突き合わせて見せる姿勢が一貫しているように感じます。(ダッシュボードのマトリックスで確認可能)
しかし、23,019件の候補から1,596件の開示まで絞り込む過程には、外部企業6社による地道な検証が挟まっています。
AI は脆弱性を人の処理速度を超える勢いで見つけられても、それを開発者が直せる形に整え、修正まで見届けるトリアージの部分は、世界中の叡智が集結しても依然として人手がボトルネックになっているようです。
発見が爆発的に増えれば、その先の修正キューも詰まっていく。
見つける速度と直す速度の差、そしてアプリケーションに留まらずインフラのパッチ適用まで全てに影響が波及していることを考えると、コロナ禍に味わった未来の不透明さから来る不安を思い出します。
参考文献
Anthropic Frontier Red Team: Coordinated Vulnerability Disclosure - Anthropic https://red.anthropic.com/2026/cvd/
AI クラスタの配線が銅から光へ - スケールアップを変える Co-Packaged Optics の最新情報
画像の引用元: Building a Production-Ready Optically Connected Rack for AI Scale-Up
📚 トピックのポイントを 3 行で
AI クラスタの配線が銅の限界に達し、チップ直結の光接続へ移り始めた
CPO は光の部品を演算チップと同じパッケージ内に統合し、電力と帯域を改善
Wiwynn がComputex 2026 でCPO ラックをエコシステム8社と実演
地味なテーマに聞こえるかもしれませんが、AI データセンターの配線に変化があったようです。
GPU をたくさん繋いで大きなAI を動かすとき、繋ぎ方には大きく2種類あります。
一つはスケールアウト、ラックとラックを跨いで何百何千ものGPU を束ねる繋ぎ方です。
もう一つはスケールアップ、ひとつのまとまり(たとえば1台のサーバーやラックの中) でGPU 同士を密に繋ぎ、あたかも巨大な1個のGPU のように振る舞わせる繋ぎ方です。
スケールアウトの配線はすでに光ファイバが主役になっていましたが、スケールアップのほうは長らく銅線の領域でした。
NVLink(NVIDIA のGPU 間を高速で繋ぐ独自の接続技術) に代表される、距離は短いが帯域が桁違いに必要な世界です。
その銅が、限界に近づいているようです。
NVIDIA のJensen Huang 氏が昨年のGTC で示した試算が分かりやすく、
従来のやり方でGPU を光接続しようとすると、GPU 1個あたり光トランシーバ (電気信号と光信号を相互に変換するモジュール) が6個必要で、消費電力は180W、コストは6,000ドル (約90万円: $1=150円換算) かかる。
これを百万GPU 規模に広げると、トランシーバだけで600万個という計算になる。
銅は帯域・到達距離(高速になるほど数メートルしか届かない)・消費電力の三方向で頭打ちになり、AI の規模拡大そのものを縛り始めているというものです。
ここで登場するのがCPO (Co-Packaged Optics: 光通信の部品を、スイッチや演算チップと同じパッケージの中に一体で組み込む実装方式) です。
これまで基板の端やフロントパネルに挿していた光の部品を、チップのすぐ隣まで持ってきます。
そうすると、信号が電気のまま走る距離が極端に短くなり、信号の劣化も消費電力も大きく下がるというものです。
NVIDIA は自社のCPO スイッチについて、必要なレーザーを4分の1に、電力効率を3.5倍に、信号品質を63倍に改善できるとしています。
光は外付け部品から光はチップの一部へ、という発想の転換です。
このCPO におけるプレーヤーを層ごとに整理すると、土台のファウンドリはTSMC で、COUPE と呼ぶ光電子集積のプラットフォームと3D 積層技術がCPO の物理的な基盤になっています。
チップ層ではNVIDIA がSpectrum-X Photonics(Ethernet 向け、2026年出荷予定) とQuantum-X Photonics(InfiniBand 向け) を、Broadcom がTomahawk Ultra などを投入しています。
そして専業スタートアップのAyar Labs は、TeraPHY という光エンジンを武器に、3月に5億ドル(約750億円) のシリーズE を調達しました。
出資者にはNVIDIA・AMD・MediaTek が名を連ねており、チップ大手が揃って光の内製化 に張っている構図が見えます。
NVIDIA 自身も、光部品メーカーのCoherent とLumentum に各20億ドル (約3,000億円)、合計40億ドル (約6,000億円) を投じてサプライチェーンを押さえにいっています。
そして今週、台湾のクラウドインフラODM であるWiwynn が、Computex 2026 でCPO ベースのスケールアップ・ラックを披露しました。
このラックにはAyar Labs に加えてGUC・Browave・Corning・FOCI・Molex・SENKO・TE Connectivity という光の部品・ファイバ・コネクタ各社の部材が1ラックに詰め込まれており、これまでのコンポーネント単位の展示からラックシステムへの展示へ発展したように見えます。
Wiwynn のCEO であるWilliam Lin 氏は、
AI インフラは光と電気の融合へ向かっており、シリコンレベルの技術をラックスケールのシステムへ統合する段階に来た
と述べています。
CPO が実験レベルのデモから、データセンターに置けるラックへと現実味を帯びてきたと捉えてよいのではないでしょうか。
CPO は単に高速な光通信の話ではなく、スイッチ、アクセラレータ、ラック設計、光部品、冷却、保守性まで含めたアーキテクチャ変化として捉える必要がありそうです。
今後、AIインフラを支える技術動向として継続的に注視していきたいと思います。
参考文献
Wiwynn and Ecosystem Partners to Showcase Co-Packaged Optics Innovations at Computex 2026 - PR Newswire
https://www.prnewswire.com/news-releases/wiwynn-and-ecosystem-partners-to-showcase-co-packaged-optics-innovations-at-computex-2026-302784419.htmlAyar Labs and Wiwynn Partner to Bring Co-Packaged Optics to Rack-Scale AI Systems - Ayar Labs
https://www.wiwynn.com/news/ayar-labs-and-wiwynn-partner-to-bring-co-packaged-optics-to-rack-scale-ai-systemsNVIDIA Announces Spectrum-X Photonics, Co-Packaged Optics Networking Switches - NVIDIA Newsroom
https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-spectrum-x-co-packaged-optics-networking-switches-ai-factoriesCo-Packaged Optics Race: Strategic Approaches from NVIDIA and Broadcom - IDTechEx
https://www.idtechex.com/en/research-article/co-packaged-optics-race-strategic-approaches-from-nvidia-and-broadcom/34467
米政府はなぜ量子に税金を投じるのか - Quantinuum への支援に見るワシントンの計算
GTC2026 にて筆者撮影。イオントラップ式のデモ機。
📚 トピックのポイントを 3 行で
Quantinuum が米商務省CHIPS R&D と量子開発の基本合意を結んだ
半導体支援の枠組みを量子に広げ、国内サプライチェーンを固める狙い
Synopsys やbp との商用提携が、政府が動く理由を裏づけている
米国政府が量子をどう見て、どう動いているか?
それを考えるうえで参考になるニュースがありました。
5月21日、量子コンピュータ企業のQuantinuum が、米商務省のCHIPS R&D 部門とLOI (Letter of Intent: 正式契約の前段階で結ぶ基本合意の文書) を交わしました。
連邦政府の資金を使って、誤り耐性を持つ量子コンピュータの開発を後押しするという内容です。
ここで言うCHIPS とは、もともと米国が半導体の国内生産を取り戻すために作った支援の枠組みのことです。
つまり政府は、半導体のために用意した仕組みを、そのまま量子にも広げ始めたようです。
ではなぜ、まだ実用段階とは言えない量子に、政府がわざわざ税金を投じるのでしょうか?
理由は大きく3つに整理できます。
1つ目は安全保障です。
量子コンピュータが現実的な問題解決に使える段階になると、いま世界中で使われている暗号の一部が解けるようになるとされています。
今のうちに暗号化された通信を盗んでおき、量子が完成したら後で解読する という発想すらあるほどで、どの国が最初にそこへ到達するかは、国家機密の読み合いに直結します。
2つ目は経済競争力です。
半導体と同じく、量子で先頭を取れるかどうかが、次の数十年の産業の主導権を左右すると考えられています。
3つ目がサプライチェーンです。
量子コンピュータを作るには、極低温で動く特殊な半導体や、光を精密に扱う部品が要ります。
これらを他国に依存したくない、というのが本音のようです。
今回の合意では、その依存したくないを具体的な企業名で固めにきているように見えます。
Quantinuum は、半導体製造のGlobalFoundries と、集積フォトニクス (光の部品を1つのチップに集積する技術) のMonarch Quantum を国内パートナーに据えました。
商務長官のHoward Lutnick は、今回の投資が国内産業の上に築かれ、高賃金の雇用を生むと強調しています。
量子を未来の研究テーマではなく、半導体と同じ国家戦略物資として扱う、という政府の意思がはっきり出ているように感じました。
そして、政府がこのタイミングで動く背景には、量子が商用の現場に手を伸ばし始めた事実があります。
Quantinuum はこの数日のあいだに、EDA (Electronic Design Automation: 半導体や電子回路の設計を自動化するソフトウェア) 大手のSynopsys と組んで産業設計のシミュレーションに量子を持ち込む提携を発表し、翌日にはエネルギー大手のbp と、地下の資源を探る地震探査の計算に量子を使う提携を発表しています。
研究の話だったものが、設計やエネルギー探査というお金が動く現場に近づいてきた。
だからこそ政府も腰を上げた、という順番に見えます。
ちなみにQuantinuum という会社は、2021年にHoneywell の量子部門と、英ケンブリッジ発のCambridge Quantum が合併してできた会社です。
社員約700名のうち7割以上が博士・修士号を持つという、研究色の濃い集団で、日本にも拠点を構えています。
日本も国として量子の戦略を掲げ、富士通やNEC、理化学研究所などが研究を進めています。
米国が量子を半導体並みの安全保障案件として、国内サプライチェーンごと囲い込みにいくという構図は、日本がどこに資源を集中すべきかを考えるうえでも参考になりそうです。
参考文献
Quantinuum Enters into Letter of Intent with the U.S. Department of Commerce - Quantinuum
https://www.quantinuum.com/press-releases/quantinuum-enters-into-letter-of-intent-with-the-us-department-of-commerce-for-funding-opportunity-to-accelerate-us-leadership-in-quantum-computingQuantinuum and bp Collaborate Towards Solving Fundamental Wave Physics Challenges with Quantum Computing - Quantinuum https://www.quantinuum.com/press-releases/quantinuum-and-bp-collaborate-towards-solving-fundamental-wave-physics-challenges-with-quantum-computing
Quantinuum Announces Collaboration with Synopsys Toward Advancing Industrial Design - Quantinuum
https://www.quantinuum.com/press-releases/quantinuum-announces-collaboration-with-synopsys-toward-advancing-industrial-design-with-quantum-computing
最後までお読みいただきありがとうございます!
励みになりますので、ぜひLikeボタン (♡) をお願いします!





