Weekly newsletter #32
ワクチン接種が進み経済活動が再開しつつある米国では、失業保険申請件数がパンデミックが始まって以来の最低水準の40万6,000件に減少しました。失業給付金は、各州政府が給付する週351ドル(全米平均)に加え、連邦政府からの週300ドルが追加され、失業中は毎週651ドルが給付されていることになります。元々低賃金で働いていた人達にとっては手厚い支援だと言えます。また、これまで給付対象となっていなかった自営業者やギグワーカー(Uberドライバーなど)にも対象を広げ、多くの人達を救ってきました。
一方で、現在労働者不足が話題になっています。特にCOVID-19で最も影響を受けているレストランやレジャー関連、ホテルなどのサービス業界が求人募集をしても、かつて解雇した人達はすぐには戻って来ないようです。十分な失業給付を受けている人達は、再就職するならより良い雇用条件を求めています。実際に、4 月の平均時給は 0.7% 上昇して30.17 ドルとなり、ウォルマート、アマゾン、コストコなどはいずれも時給を大幅に引き上げています。
このような状況を踏まえて、テキサス州、ジョージア州、テネシー州などの20州は、6月12日には緊急援助を打ち切り、連邦政府の週300ドルの追加給付も終了する。その他、フロリダ州やアリゾナ州などの4つの州は、300ドルの追加給付のみを終了させます。ここで少し気になるのは、これらの州のほとんどは共和党支持基盤の州ということです。バイデン民主党政権の過剰な経済支援が、失業者の労働意欲を奪って雇用不足を生んでいるというのが彼らの主張です。失業者は再び職に就くのであれば、低賃金労働の貧困生活から抜け出したいと考えるのは当然のことです。一時的な経済支援の期間云々ではなく、中長期的な視点での経済格差や貧困層の救済が、米国にとっては大きな課題であることに違いはないでしょう。
Microsoft はGPT-3 を使用して自然言語でコーディングを実現
MicrosoftがOpenAIの開発したGPT-3の独占ライセンスを保有しているのは、もうご承知だと思いますが、同社として初めてGPT-3を使った商用ツールを発表しました。Excelの数式をベースとしたローコード・プログラミング言語のMicrosoft Power Fxに話し言葉をコードに変換する機能を搭載しました。昨今注目を集めるローコード・ノーコードですが、直感的なUIやドラッグ&ドロップでソフトウェア開発が出来ると言っても、数式のロジックを理解する必要があったり、全くの素人にとって簡単とは言い切れません。これを「Aが含まれる注文を10件表示し、購入日が新しいものを上から並べて」というような文章を入力するとコードに変換してくれます。まだ出来ることは限定的ですが、将来的には文章力さえあれば、ノーコードで立派な開発ができるように発展を遂げるかもしれません。
また、Open AIは今週 OpenAI Startup Fundを立ち上げ、優良なAIスタートアップに1億ドルの基金を投じて支援していくことも発表しています。
Merlin Labs は自律飛行する無人飛行機の商用運用を開始
自律飛行のスタートアップ Merlin Labsは、Google Ventures などから2500万ドルの資金を調達。同社は、空飛ぶ車やeVTOL(電動垂直離着陸機)を作っているのではなく、既存の航空機を無人で自律飛行する技術を提供しています。既に一般の航空機でも自動操縦機能が搭載されているとはいえ、パイロットのいない無人の飛行機に乗りたいとは思わないですね。冷静に考えれば、歩行者や不測の障害物などが多い地上の自動運転車よりも、むしろ空のほうが安全で自律運航は簡単な気もしますが。
https://www.theverge.com/2021/5/26/22453042/merlin-labs-autonomous-flight-startup-stealth-funding
Googleは病院チェーンと提携して医療アルゴリズムを開発
Googleは、世界最大規模の国立病院チェーン HCA Healthcareと提携し、患者の医療記録と医療機器のデータを統合し、病院の業務改善や患者のモニタリング、医者の意思決定支援などに役立つプログラムの開発を計画。医療データのデジタル化が急速に進むのに伴って、病院と大手テック企業との提携は多くなってきています。Googleは過去にもAscensionという病院グループと提携しており「プロジェクト・ナイチンゲール」と名付けられたプロジェクトにて、何百万人もの患者データにアクセスできるとして注目を集めました。患者のプライバシーが厳密に守られることが前提となるが、大手テック企業との提携により医療の発展が加速度的に進むことを期待したい。
NVIDIAはゲームとデータセンター需要により記録的な収益を上げた
NVIDIAは、第1四半期の決算を発表し、売上高が前年比84%増となったことを報告しました。パンデミックによる引き篭もり需要により、ゲーム用GPU、暗号通貨マイニング用途などで、GPU事業は前年比81%増加しました。さらに、データセンター用チップの関連事業は88%増加という売上を記録しました。これは、2019年に買収したMellanoxが大きく貢献しているという。4月のGTC2021のイベントでもMellanoxをベースとしたDPU(データ処理装置:Data Processing Unit)が、今後の重要な鍵になるとして注目を集めていた。
NVIDIAは2026年までにDPUを支配すると予測(Weekly newsletter #26)
https://siliconangle.com/2021/05/26/massive-demand-gamers-drives-record-revenue-nvidia/
APIセキュリティのSalt Security は7,000 万ドルを調達
Salt Securityは、APIの脆弱性検出をするスタートアップで、わずか1年足らずで3回目のラウンドで7,000万ドルのシリーズCを確保しました。今やWebトラフィックの83%がAPIを経由していると言われるほど、APIの重要性は増しています。同社の収益は1年で400%増加しており、APIセキュリティの分野がいかに注目されているかを裏付けています。同分野の多くのスタートアップも資金調達をしたり、買収をされるなど非常に動きが活発です。