Weekly newsletter #34
カリフォルニア州は、6月15日から経済活動が完全に再開させます。レストランやバー、ジムなどの屋内飲食や入場数制限は撤廃され、ワクチン接種済の人はマスクの着用も必要なくなります。スポーツ観戦やコンサートなどの大型イベントでは、ワクチン接種やPCR検査の陰性証明が必要だったり、公共交通機関ではマスク着用が必要とされるなどの規制は一部残りますが、それでも全面再開となれば一気に街中の様子は変わることでしょう。
しかし、現在のカリフォルニア州のワクチン接種率は55.1%です。この数字だけを見ると集団免疫が獲得できているとは言い難い状況です。これに対して、ワクチン接種を加速させるため「Vax for the Win」という宝くじキャンペーンが始まっています。ワクチンを接種すれば現金が当たるという非常に分かりやすいインセンティブを与えています。なんと総額1億1,650万ドルという規模です。6月4日と6月11日の金曜日に、それぞれ15人に50,000ドルが当たるというプログラムで、既に30人が50,000ドルを手にしました。そして、6月15日には150,000ドルの賞金を10人が獲得できるチャンスがあります。さらに、新規ワクチン接種者には先着200万人に50ドルのギフトカードがもらえるなど、完全再開に向けて少しでも接種率を上げたい状況のようです。
暗号通貨に関して、インパクトのある話題があったので3つ取り上げます。
まずは、アメリカの話題ではありませんが、中米のエルサルバドルがビットコインを法定通貨にすると発表しました。先進諸国も暗号通貨を法定通貨として検討し始めていますが、ビットコインとなると価格変動が大きく投機的な印象を拭えないだけに法定通貨には不釣り合いのように思えます。さて、このエルサルバドルの試みは上手くいくのでしょうか。
エルサルバドルは初めてビットコインを法定通貨に採用します
まず、エルサルバドルがどのような国かも良く知らない人が多いのではないでしょうか。中米のグアテマラとホンジュラスと国境を接する人口660万人の小国で、長らく内戦状態が続き、終戦後も政治腐敗が続くなどして決して豊かな国ではないようです。米国への移民(不法入国を含め)などからの国外からの送金がGDPの1/4を占め、国民の70%が銀行口座を持てない経済状況にあり、貧困による治安悪化も際立っています。国外からの送金をビットコインにして手数料を削減、ビットコインのマイニング(採掘)には火山を利用した地熱発電でクリーンで行うとしていますが、治安が悪いことを考えれば、国家がマネーロンダリングを容認するようなことになるのではないかと警戒されています。ビットコインの価格変動に伴い、GDPも大きく変動するという国家運営が正しい姿なのか、今後の動向に注目です。
コロニアルパイプラインがハッカーに支払った230万ドルの暗号通貨を押収
コロニアルパイプラインへのランサムウェア攻撃にて、ロシアのハッカー組織「DarkSide」に支払われた75ビットコイン(約500万ドル)のうち、63.7ビットコイン(現在のレートで230万ドル)がFBIにより差し押さえられました。EllipticはDarkSideに支払われたビットコインを追跡(Weekly newsletter #30)にて、ビットコインを追跡がある程度可能だということを知りましたが、最終的に押収までしてしまうとは、攻撃者に対してビットコインでの身代金要求は万全でないということを知らしめたのではないでしょうか。
先週の食肉加工会社JBSのランサムウェア攻撃事件でも、REvilに対して身代金1,100万ドルが支払われたとの報道がありました。同様に身代金の回収ができれば、今後ランサムウェア攻撃に対する抑止力になるかもしれませんね。
FBIは偽の暗号化メッセージングアプリを使った大規模なおとり捜査で犯罪組織を逮捕
2年近く麻薬密売人や組織犯罪によって利用されていた「ANOM」と呼ばれる暗号化されたメッセージングアプリとデバイスは、実はFBIが主導して開発、監視していたものだった。これを使って、欧米オセアニアの警察が協力して800人の犯罪者を逮捕した。何も知らない300の犯罪組織が約12,000台の専用デバイスを購入し、国際的な麻薬密売の取引に使っていたというのだから、何だか映画化されそうな話である。
暗号通信も暗号通貨も第三者の介入が難しいと信じて使っていたものが、善悪に関わらず、簡単にバックドアが仕掛けられてしまうようなことがあると、業界全体の信頼が揺らいでしまうことも懸念されます。
CDNの停止により、広範な世界中のWebサイトが閲覧不可に
Fastlyは、Webコンテンツ配信の高速化サービス CDN(Content Delivery Network)を提供する会社です。6/8早朝(米東部時間)に起こったFastlyの障害により、数分から1時間程度、世界中の主要なサイトのAmazon、Reddit、Spotify、eBay、Twitch、Pinterestなどの他、CNN、NewYork Times、Bloomberg、BBCなどのメディア、日本でも日経新聞、読売新聞、楽天、メルカリなどのサイトが一時的に利用できなくなりました。今回の障害は、1人の顧客の構成変更に起因したバグであったと発表しましたが、いずれにしろ単一の企業が与える障害としては影響範囲が大き過ぎる気がする。しかし、同タイミングで、AppleがiCloudのプライバシー機能強化で、Fastly、Akamai、Cloudflareを利用していくことは発表したため、同社の下落した株価を引き上げて相殺されました。
GoogleはAIを使用して、次世代のAIチップを人間よりも早く設計します
Googleは機械学習を使用して、次世代の機械学習チップの設計を支援します。人間が数ヶ月かかる作業をAIは6時間以内に達成してしまうという。この研究はGoogleのTPU(GoogleがTPU v4 AIチップを発表:Weekly-newsletter #31)に使われている。
3Dプリントのロケットスタートアップ Relativity Spaceは、6億5000万ドルの資金を調達
Relativity Spaceは、3Dプリンタ技術を使った大規模で再利用可能なロケットを製造するスタートアップ企業です。新たに6億5,000万ドルを調達し「Terran-R」ロケットの開発を加速する。これはSpaceXのファルコン9ロケットとほぼ同じサイズになるという。ロケットの機体は特殊なアルミニウ合金で3D印刷され、帰還時の大気圏再突入用の上段部はさらに耐熱性の高い素材で印刷されます。
宇宙産業については、SpaceXだけでなく、Blue Origin のジェフベゾスが自らロケットに搭乗し宇宙に行くことを表明するなど、話題に事欠かない。新たな3Dプリンタ技術を使って、これらに対抗しうる企業が誕生してくると思うと宇宙産業はまだまだ期待が膨らみます。