Weekly newsletter #38
バイデン大統領は、独占を規制して正当な経済競争を促進させ、消費者保護を目的とする大統領令に署名しました。発表されたファクトシートは、テック業界のみならず、食品や医薬品、運輸、農業分野などの72の条項に及び、独占的な立場で競争を阻害している状況を解決しようとする姿勢が明確に示され、司法省(DOJ)と連邦取引委員会(FTC)を中心に連邦政府機関の実行力を強化していくことが記載されています。
ビッグテックに対しては「支配的なインターネットプラットフォームの利用、新興の競合企業の買収、連続的な合併、データの蓄積、無料製品による競争、ユーザーのプライバシーへの影響に注意を払う」として、監視を強化していく方針です。インターネットサービスプロバイダーに対しても、価格の透明性や契約切り替えの制限などを防止、「ネットの中立性」の復活させるとしている。
その他、補聴器が店頭で購入できるようにするとか、携帯電話の修理をサードパーティにさせない制限の解除、ジェネリック医薬品の輸入許可、航空会社の手荷物遅延の払い戻しルールなど、意外に細かい内容も多数含まれていました。これにより新規参入の障壁が下がり、消費者の選択肢も増えるとなれば、確かにイノベーションが促進される機会が生まれるのではないかと思わせられる内容でした。ビッグテック解体の話題ばかりに注目しがちですが、ここから新しく生まれるビジネスチャンスにも注目していきたいですね。
米国防総省はMicrosoftとのJEDI契約を破棄し、新たな入札を計画
米国防総省は、2019年にMicrosoft Azure の採用が決まっていた100億ドル規模のクラウドプロジェクト「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure) をキャンセルし、新たに「Joint Warfighter Cloud Capability」(JWCC) と呼ばれるマルチベンダー契約を行うと発表した。JEDIは、Microsoftに契約が決まった当初から、AWSからの異議申立てが行われていた。トランプ前大統領が不適切に介入したとして訴訟を起こしていた。ワシントンポスト紙を傘下に持つジェフベゾスのことをトランプはかなり嫌っていたという話だ。それ以外にも10年という長期契約で1社独占契約が問題視されていた。
以前より他の機関でも同様の課題感があり、米中央情報局(CIA)では、2020年11月の「C2E」というクラウド契約において、AWS1社から、Google、IBM、Orcle、MS、AWSの5社とのマルチクラウドベンダー契約へ移行している。
第2四半期は、ユニコーン、資金調達、メガラウンド、エグジットの全てが過去最高を記録
CB Insightsが四半期ごとに発表する「State of Venture Report」によると、第2四半期のベンチャー投資も引き続き好調で、新規ユニコーン企業数、米国の資金調達額、メガラウンド数、エグジット数ともに過去最高を記録しました。世界のスタートアップ企業に1,560億ドルが投資され、2020年の同四半期と比較して157%増加。過去10年間で最大の調達額となりました。
評価額が10億ドルを超えるユニコーン企業が136社誕生し、前年同期比487%増。世界の資金調達で最も注目のセクターはフィンテックで、全体の資金調達額の22%を占め、前年同期比191%増。
また、かつてのビジョンファンドのように今最も勢いのあるVCの Tiger Globalは、当四半期だけで81件の投資を実施しており、なんと1営業日あたり1.3件の投資を行なっている計算になる。この勢いはいつまで続くのかが興味深いところです。
NVIDIAは英国のヘルスケアAI研究向けに最速のスーパーコンピューターを発表
NVIDIAは、英国で最も強力なスーパーコンピュータである「Cambridge-1」を発表。ヘルスケア分野のAI研究に使用される予定で、アストラゼネカ社、GSK社、Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust社、King's College London社、Oxford Nanopore Technologies社が、このスーパーコンピュータを使用して、認知症などの脳疾患、AIによる創薬、ヒトゲノムから病気の原因となる変異を見つけるなどの用途で活用する。
やはり気になるのが、NVIDIAの英国Armの買収に対して、英国当局が安全保障上の問題を理由に承認していない状況を好転させるために、英国への貢献を印象付けるものなのか?と勘ぐってしまう。NVIDIAは、Arm買収の件とは全く無関係だと否定しているが、少なからず悪い影響を及ぼすことはないでしょう。
T-Mobile 5Gで遠隔操縦するHaloの無人運転車サービスが開始
T-MobileとHaloは、5Gネットワークを使ってリモートオペレータが操縦する無人自動車サービスをラスベガスの公道で開始します。これは、明らかに他の自動運転車のアプローチとは大きく異なり、ユニークです。レンタカーをイメージすると良いのですが、顧客がHaloを呼び出すと遠隔操縦された無人の車が到着し、顧客は自分で目的地まで運転し、目的地で車を乗り捨てれば、車は自動で別の顧客のところへ遠隔操縦されていくという。商業的にはやや疑問も残るが、完全自動運転が実現できるまでの安全優先のサービスと5G活用事例ということだろう。
Pony.aiはレベル4の自動運転車を2023年までに大量生産する
Pony.aiは、トヨタが出資する中国系の自動運転システムの開発メーカーで、レベル4の自動運転車を2023年までに量産する計画するという。中国のほか、米国カリフォルニア州でも試験運転が続けられているが、レベル4の車には、米国Luminar Technologies社のIrisLIDARセンサーを搭載し、最新の高精度のセンシング技術を採用する。
自律航行船がサンフランシスコからハワイへの調査航海を完了
SaildroneのSaildrone Sueveyor は、深海マッピング用に最適化された自律航行型の船舶で、28日間の航海で2,250海里、6,400平方海里の海底を地図を作成した。従来は大型の有人調査船で使用していた音響機器を搭載し、水深7,000mまで海底を高解像度でマッピングが可能。風力や太陽光を動力源として長期間の調査が可能で、気候変動、海洋天然資源調査、海上安全のための調査が提供できます。
海の80%以上はまだ海底地図などがなく、海洋探査が行われていないという。それは、従来は大型船を使用するしかなく、船の建造などに多額の費用がかかることが理由でした。Saildorone Sueveyorを使えば、わずかな費用と二酸化炭素排出量で同様の調査が可能なため、海洋探査のパラダイムシフトをもたらします。