Weekly Newsletter #226
”アメリカ離れ”加速ー欧州が掲げる「デジタル主権」/Appleの次なる一手!Perplexity買収で加速する「AIファースト」戦略/ 「高速回線はまだ先?」トランプ政権による混乱で地方のブロードバンド整備が減速
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皆さん、おはようございます。
6 月に入ってからロサンゼルスでは、不法移民の一斉摘発に抗議するデモが続き、ニュースで目にされた方も多いかもしれません。きっかけは、国土安全保障省捜査局(HSI)が市内で行った大規模な取り締まり。連邦の強硬策に対し「移民の街を守れ」と住民や労組が声を上げています。
ベイエリアはというと、通勤電車もカフェも相変わらず平穏そのもの。ただサンノゼ市庁舎前では連帯集会が開かれ、市からは「今後集会が拡大する可能性もあるのでご留意を」との注意喚起が届きました。
移民歓迎ムードの強いカリフォルニアと、強制送還を推し進める連邦政府・・両者の間には大きな温度差がある様です。
大統領は「法と秩序」を掲げて軍投入の可能性まで口にし、地元紙は「小競り合いが長期化する恐れ」と報じました。
もっとも、シリコンバレーの街には相変わらず多国籍のエンジニアや家族連れが行き交い、移民が社会を支える現実を肌で感じます。IT 企業にとっても人材確保やビザ発給は死活問題。政策の行方がビジネスにも生活にも波及しそうです。
出張やカンファレンスでベイエリアを訪れる際は、交通規制や集会情報を事前にチェックしつつ、万が一にも巻き込まれない様にご注意ください。
それでは今週のシリコンバレー最新ニュースをお届けします。
先週のニュースレターを見逃した方はこちら
Weekly Newsletter #225:Meta、データラベリング企業Scale AIに約2兆円出資 /Google Cloud障害でネットに大規模影響/ 営業支援スタートアップClay、評価額約4200億円で資金調達
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”アメリカ離れ”加速ー欧州が掲げる「デジタル主権」
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🌏今週のニュースのポイントを3行で
トランプ政権下で起きた出来事を契機に欧州各国で”テクノロジーのアメリカ離れ”が加速
トランプ制裁によるMicrosoftメール停止が火種となり、リスクが顕在化
EUはデジタル主権を掲げ、代替技術の育成に乗り出す
私たちの生活の中にも深く浸透している米国BigTechのサービス。
ある日突然それらのサービスが停止されたら・・ビジネスが停止し大混乱を引き起こすでしょうね。
かくいう私も様々は便利なサービスに依存した生活を送ってしまっていますが、欧州では「デジタル主権(Digital Sovereignty)」の機運が高まっているようです。
発端は、トランプ前大統領がある国際機関の要人に制裁を科した際、その人物の業務メールがMicrosoftによって停止されたことだったそうです 。
この出来事に欧州の関係者は衝撃を受け、「米国に重要インフラを握られていては自国の主権が脅かされる」との懸念が広がりました。 実際、一部の職員は米国系のメールからスイスのProtonMailに乗り換える動きもあったとのことです 。
欧州各国の政府や企業は、プライバシー保護や政治的独立性を確保すべく、米企業によるクラウドやメールサービスへの依存を減らし、自前の技術基盤を育てようとしています 。
もっとも、検索エンジンやSNSなど多くの分野で米企業が依然圧倒的なシェアを持つため、完全な脱却は容易ではないのは想像に難くないですね。
それでも「まずは身近なところから」と、欧州製の通信アプリやクラウドを選ぶ動きが一般ユーザーにも広がりつつあるようです。
Appleの次なる一手!Perplexity買収で加速する「AIファースト」戦略
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🌏今週のニュースのポイントを3行で
AppleがAIスタートアップPerplexity AIの買収を検討しているとの報道
AppleがAI能力を強化し、Googleとの検索提携からの脱却を目指す動き
実現すれば検索市場に大きな影響
皆さんはインターネットで検索する時は何を使っていますか?
私はChromeブラウザを使っているので、必然的にGoogle検索となるわけですが、Mac&iPhoneユーザーの私にも影響しそうな話です。
Bloombergによると、Apple が生成 AI スタートアップ Perplexity AI の買収を社内で協議している様です。
Perplexity AI はウェブ情報を要約・引用つきで提示する検索ツールを提供しており、OpenAI の ChatGPT や Google Gemini のライバル的存在。
もし話がまとまれば、Safari に AI 検索を丸ごと載せて、長年の Google 依存から脱却・・そんな未来も現実的になってきそうです。
Perplexity AI の直近評価額は 140 億ドル に達し、取引規模は「過去最大の買収案件」になる可能性があるということですが、最近”過去最大”という言葉を20回くらい言っている気がします・・。
同社には年初に Meta も触手を伸ばしたと報じられており、大手プラットフォーマーが AI 機能を内製化する流れが加速している様です。
一方、市場では以前このNewsLetterでもお伝えした「Andreessen Horowitz が 200 億ドル規模の AI ファンドを検討」といった報道も相次ぎ、急騰するスタートアップ評価額をめぐり “AI バブル” を懸念する声も上がっています。
買うのか、買わないのか。どちらに転んでも、これからの検索とAI投資の流れは面白い展開となっていきそうです。
「高速回線はまだ先?」トランプ政権による混乱で地方のブロードバンド整備が減速
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🌏今週のニュースのポイントを3行で
トランプ政権が 420 億ドル規模の BEAD (ブロードバンド公平性・アクセス・展開)プログラムの規則を急きょ見直し
州はあらためて ISP 公募をやり直す必要があり、年内着工予定だった案件が軒並みストップ
衛星ネット企業が有利になる一方、光ファイバー優先の方針が後退し「地方は“そこそこ速い”回線で我慢?」との懸念が浮上
日本では、どんな田舎に行っても高速インターネットが使えるのが当たり前になっていますよね。でも、アメリカの広〜い片田舎ではまだ「CATVしか通ってない」なんて地域も少なくないのが現実です。
そんな地域のデジタル格差を一気に解消する切り札として注目されてきたのが、総額420億ドルのBEAD(Broadband Equity, Access, and Deployment)プログラム。…だったのですが、ここに来てトランプ政権がまさかの規則変更。その結果、整備を進めていた各州が一斉に足踏み状態に陥っているそうです。
どう変わったのかというと、これまで「まずは光ファイバー!」という明確な方針だったのに対し、新ルールでは“技術中立”を掲げて、光・衛星・固定無線をすべて横並びで評価することに。しかも、すでに進めていた計画を一旦止めて、「プロバイダーから新たに入札を取り直すよう州政府に義務付ける」という徹底ぶり。
このルール変更で、イーロン・マスク氏の Starlink や Amazonの Kuiper など、衛星系プロバイダーも補助対象に。工期が短く済むというメリットはあるものの、「地方には“とりあえずの技術”を与えればいいのか?」と、将来のニーズに応えられない懸念も出ています。
そしてこの話、技術だけでなく政治の匂いもぷんぷんします。「woke(リベラル)な規制を排除する」として進められている一連の政策見直しの一環であり、民主党寄りの州政府からは「手続きをいじって遅らせてるだけじゃないか!」といった不満の声も。
遠隔医療、教育、地元ビジネス…今や高速インターネットは暮らしのライフライン。整備の遅れは、地方の競争力や暮らしの質に直結します。トランプ vs. 民主党の綱引きよりも、「一日でも早くつながること」が、現地の人たちにとっては何より重要なはず。
・・なんてニュースを読みながら、昔、駆け出しのエンジニアの頃に長野の限界集落へ村全体の高速インターネット構築作業に行った日のことを思い出しました。あのときの「おぉ!早い!」という喜びの笑顔、今も忘れられません。
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高速インターネットというか光回線を都内で新たに契約したところ敷設まで約2か月かかり、今もまだネット回線が引けていません 泣
現場の回線工事の人たちの人手不足なのかなーと現場調査にきたご高齢のエンジニアを見て感じました。高速インターネット大事ですねw
引き込み工事に待ちが生じているのかもですね・・日本はどこも人手不足ですね〜