Weekly Newsletter #232
AI総力戦の幕開け:Palo Altoの巨額CyberArk買収と加速するインフラ争奪戦/AIの電力渇望にテキサスが「待った」:新法がデータセンターに課す厳しい現実/ 空の物流革命、いよいよ始動か—米国でドローン規制緩和案発表
Photo:筆者が撮影
皆さん、おはようございます。
近所の公園シリーズ第5弾は、みんな大好きサンフランシスコの象徴的な有名な橋、ゴールデンゲートパークです。
ゴールデンゲートパークは、Dead & Company(8/1–3)やOutside Lands(8/8–10)などビッグイベントが続くため、8月中旬まで主要道路や芝地の長期クローズが行われています。
週末は周辺の車両進入・降車場所にも制限がかかるため、来園や近隣での用事は公共交通(Muniの増発便)や徒歩・自転車が推奨とのことです。
日本は夏休みシーズン真っ只中ですね。今年は記録的な暑さと聞きますが、サンフランシスコは相変わらず涼しく湿度も低いため、とても過ごしやすい気候です。避暑地としての旅行先に、サンフランシスコを検討してみてはいかがでしょうか。もしお越しの際は、ぜひお声がけください。
それでは今週も、そんなシリコンバレーから最新ニュースをお届けします。
先週のニュースレターを見逃した方はこちら
Weekly Newsletter #231 小型原子炉で冷却と電力を同時供給する次世代AIデータセンター、7.5 億ドルを呼び込むNetOps の自動化領域、そして許認可を半減させる米AIインフラ大改革――世界の“AI基盤争奪戦”の今を一気読み。
Weekly Newsletter #230:生成AI を全庁導入したサンフランシスコ市、インフラ管理OSS で資金調達を加速するNetBox Labs、そしてAI データセンター特需で過去最高受注を記録したABB(瑞)--急拡大するAI インフラを巡る米国の最新動向を俯瞰します。
AI総力戦の幕開け:Palo Altoの巨額CyberArk買収と加速するインフラ争奪戦
Photo:O-DAN
🌏今週のニュースのポイントを3行で
AI競争はモデル性能だけでなく、インフラ確保とセキュリティ強化が鍵となり、M&A市場が活況
Palo Alto NetworksがCyberArkを250億ドルで買収するなど、AIシステム防御の重要性が急上昇
CoreWeaveやBaker Hughesもデータセンター電力・冷却技術を巨額買収で確保し、AI基盤強化を加速
AI開発競争は、もはやモデルの性能を競うだけでなく、それを支えるインフラとセキュリティをいかに確保するかという「総力戦」の様相となってきています。
その結果、AI関連のM&A(合併・買収)市場がかつてないほどの熱狂を見せています。
2025年7月30日、Palo Alto Networksは、IDセキュリティプロバイダーのCyberArkを250億ドルという巨額で買収すると発表しました。これまでも大型の買収を繰り返し、自社製品としてリリースしてきたPalo Altoですが、AIが高度化するにつれて、AIシステム自体や関連データを保護するセキュリティ技術の重要性が更にに高まっていることを示しているように思います。
この動きはセキュリティ分野に限らず、AIの頭脳である半導体を動かすための物理的なインフラ、特にデータセンターとその関連技術の確保も、企業の死活問題となっています。GPUaaSとして知られるCoreWeaveは、7月9日にデータセンター運営会社のCore Scientificを90億ドルで買収する契約を発表しました。この買収により、CoreWeaveはAIの計算力に不可欠な1.3ギガワットものデータセンター電力を確保することになります。さらに、エネルギー技術大手のBaker Hughesも、AIデータセンター向けの冷却システムなどを供給するChart Industriesを136億ドルで買収しており、AIエコシステムの根幹を支える技術への投資が加速しています。
AI開発競争は、AI自体に留まらずその土台となる電力、データセンター、そしてそれらを守るセキュリティといった物理的・防御的な要素を、M&Aによって迅速に手中に収めるといった動きに繋がっており、巨大テック企業による買収合戦が今後も続きそうです。
AIの電力渇望にテキサスが「待った」:新法がデータセンターに課す厳しい現実
Photo:O-DAN
🌏今週のニュースのポイントを3行で
テキサス州はAIや暗号資産マイニングによる電力需要急増を受け、2025年6月に大規模電力消費者規制法「SB6」を可決
目玉は「キルスイッチ」条項で、電力危機時に州が大規模データセンターへの電力供給を強制停止できる
データセンター事業者には送電網接続費用の自己負担や最低10万ドルの審査手数料支払いを義務化
AIのデジタルな世界の発展が、物理的な世界のインフラに深刻な影響を及ぼし始めています。その最前線となっているのが、データセンターの新たな集積地であるテキサス州です。
AIや暗号資産マイニングによる電力需要の爆発的な増加を受け、テキサス州議会は2025年6月、大規模電力消費者に対する画期的な新法「Senate Bill 6 (SB6)」を可決しました 。この法律は、簡単に言うと加熱するAIデータセンターによる電力需要から電力網の安定性を守る法律です。
この法律の最も衝撃的な条項は、通称「キルスイッチ」と呼ばれるものです。これは、電力網が危機的な状況に陥った際、州の送電網を管理するERCOT(テキサス電気信頼性評議会)が、対象となる大規模データセンターへの電力供給を強制的に遮断、あるいはバックアップ電源への切り替えを命令できるというものです 。
さらにSB6は、データセンター事業者に対して、送電網への接続にかかる費用を自ら負担することや、接続審査のために最低10万ドルの手数料を支払うことを義務付けています 。
我々庶民の家計にも関係する法律ですが、高騰する電気代、日本でもこういった影響は今後出てきそうですね。 データセンター建設によって一般の電力利用者の価格が高くならないようにしたいものです。
空の物流革命、いよいよ始動か—米国でドローン規制緩和案発表
Photo:O-DAN
🌏今週のニュースのポイントを3行で
米運輸省(FAA)が商用ドローンの視界外飛行(BVLOS)を認める新規制案を発表し、配送や空飛ぶクルマの実用化が前進
Amazonのドローン宅配や2028年LA五輪でのエアタクシー導入計画に追い風
規制案はまだ「案」段階だが、安全面への配慮を盛り込みつつ、政府も早期施行を後押し
米国でドローン配送サービスが現実に近づいているようです。
8月初旬、米運輸省(FAA)は商用ドローンが目視の届かない範囲(BVLOS)でも飛行可能とする新たな規制案を発表しました 。これまでドローンの視界外飛行は厳しく制限され、事例ごとの特別許可が必要でしたが、今回の提案により一般的な運用が認められる道筋ができます。運輸長官ショーン・ダフィー氏は「我々はアメリカのドローン覇権を解き放つ」と力強く述べ、煩雑な官僚手続きを緩和してイノベーションを促進する決意を示しました 。
この新ルールが実現すれば、Amazonが長年描いてきた空飛ぶ宅配の夢が大きく前進します。Amazonは既にテキサス州やアリゾナ州で試験運用を重ねており、「この規制変更は創業者ジェフ・ベゾス氏が2013年に語った未来を遂に現実に近づけるものだ」と業界は期待を寄せています 。
また、ドローンタクシー(空飛ぶクルマ)の実現にも追い風とのこと。業界は2028年ロサンゼルス五輪でエアタクシーを本格投入することを目標にしているそうです。
3年後ですが、自動運転のWaymoは躊躇せずに体験できましたが、空飛ぶタクシーは少し怖いですね・・。
ただし、今回発表されたのはあくまで「案」に過ぎず、即座に規制緩和が施行されるわけではないという事ですが、今後パブリックコメントや業界団体のロビー活動など、官僚的なプロセスを経て最終化されるまでに相当の時間を要すると見込まれているようです 。
とはいえ、政府もドローン産業の成長に本腰を入れており、お得意の大統領令で早期施行を指示するなど後押ししています 。規則案によればドローンは高度400フィート(約120メートル)以下で飛行し、人混みの上空は避けるなど、安全面への配慮が盛り込まれています 。業界団体は「歴史的な一歩」と歓迎しつつ、実現に向けて細部の検討に入るようです。
西海岸に来た際はエアタクシー!という日もそう遠くはなさそうです。
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