Weekly Newsletter #235
プライムデー拡大の裏で見えた、ECサブスク成長の限界 / 中国依存からの脱却なるか?EVバッテリー技術の地殻変動 / 米国、民間宇宙打ち上げ規制を緩和する大統領令
こんにちはMarvinです。今月のNewsletterは私からお届けいたします。アメリカで暮らしていると、歩道や草むらに放置されたショッピングカートをよく目にします。
最初は「なんでこんなところに?」と不思議に思いましたが、実はこれも小売業界が抱える大きな課題の一端。全米小売業協会(NRF)によれば、2022年の損失は1121億ドルに達し、その中にはカートの盗難や持ち出しによるコストも含まれます。カート1台の価格は350〜400ドルとも言われ、積み重なると負担は莫大になります。そのためTargetでは境界を越えると自動的に車輪がロックする「見えないフェンス」を導入し、Home Depotはレジを通らなければ外へ出られない仕組みを強化。さらにAIカメラやスマートホイールなど新技術の導入も進んでいます。
放置されたカートの裏には、万引きや組織的小売犯罪(ORC)への対策という切実な背景があるようです・・・。
以前のNewsletterを見逃してしまった方は下記からアクセス!!
プライムデー拡大の裏で見えた、ECサブスク成長の限界
Amazon はプライムデーを 4日間に拡大したものの、米国の新規登録は 21日間のキャンペーン期間で540万人にとどまり、前年より11.6万人少なく目標を10.6万人下回った。
セール期間中には 160万人を獲得し目標を6%上回ったものの、セール前の3週間では前年より 18.5 万人、目標比 19.3 万人少ない結果に。
プライム会員の平均年間支出は非会員の約2倍で、上半期のサブスクリプション収入は239億ドルに上った。
米国のEC市場では、サブスクリプションモデルの成長鈍化が明確になってきています。Reutersが9月2日に報じたところによると、Amazonは今年7月8日から11日にかけて開催したプライムデーを従来の2日間から4日間に拡大し、大規模なキャンペーンを展開しました。しかし、米国での新規登録者数は540万人にとどまり、前年同期比で11.6万人減、目標比で10.6万人減と伸び悩みました。
一方で、プライム会員は非会員に比べて年間平均600ドル多く消費しており、2025年上半期のサブスクリプション収入は239億ドルに達しました。Amazonにとって依然として中核的な事業であることは間違いありません。
そして競合の台頭が透けて見えます。特に、Walmartが配送付き会員制度を強化しており、顧客囲い込み競争は一段と激化しています。Amazonはこれに対抗するため、学生向け割引の拡大や農村部配送への40億ドル超の投資、さらに10月1日以降に適用される家庭外アカウント共有の禁止といった施策で会員数増を狙いますが、先行きは予断を許しません。
中国依存からの脱却なるか?EVバッテリー技術の地殻変動
新素材の競争:スタートアップはナトリウムや硫黄を使った新型電池を開発し、コストを下げ資源依存を減らす。
現在の覇権国:リチウムイオン電池の供給網は中国がほぼ独占(セル85%、原料加工90%)する。
新興技術の特徴:ナトリウムイオン、LNMO、リチウム–硫黄、全固体電池などが登場し、それぞれコスト・エネルギー密度・安全性に長所と課題を持つ。
EVの普及が加速する中で、アメリカでも関心が高まっているのが「次世代バッテリー」の話題です。リチウムイオン電池は30年以上にわたって主役を務めてきましたが、コバルトやニッケルといった希少金属への依存や価格高騰、重量や温度管理の難しさといった課題が浮き彫りになっています。
そこで注目されているのが「素材を変える派」の技術です。ナトリウム電池や硫黄電池はリチウムやコバルトを使わずに製造でき、コストを抑えられる上に安全性も高いとされています。特にナトリウムは豊富な資源なので、持続可能性の観点からも期待が大きい。ただし、エネルギー密度や量産体制はまだこれからの課題です。
一方で、リチウムイオンの系統を「改良する派」のアプローチも進んでいます。その代表がLNMO(リチウム・ニッケル・マンガン酸化物)。2028年の実用化を目指しており、既存のNMCに匹敵するエネルギー密度を持ちながら、低コストで安全性も高いとされます。さらに急速充電にも対応でき、15分未満でのフル充電が可能になると期待されています。
加えて、リチウム–硫黄電池は理論上、従来のリチウムイオンの2倍のエネルギー密度を持ち、ニッケルやコバルトといった希少金属に依存しないという強みがあります。全固体電池も軽量で高い安全性を誇り、スマートデバイスからEVまで幅広く応用できると期待されていますが、量産化はまだ先の課題です。
いまのところ、電池サプライチェーンは中国が圧倒的に支配しており、セル生産の約85%、原料加工の約90%を握っています。しかし、こうした新しい技術が実用化されれば、産業構造そのものを揺るがす可能性があります。
次世代バッテリーは、単なる性能アップにとどまらず、世界のサプライチェーンと産業地図を塗り替える可能性を秘めています。これからの進展に注目していきたいですね。
米国、民間宇宙打ち上げ規制を緩和する大統領令
環境レビューを簡素化:宇宙船の打ち上げ・再突入の許可審査から、環境影響評価を一部免除する方針。
新しい宇宙港の建設促進:商務省や国防総省、NASAに対し、宇宙港設置の障壁を見直すよう指示。
目的は競争促進:2030年までに商業ロケット打ち上げの回数を大幅に増やし、新興企業参入を後押し。
8月15 日、トランプ大統領が署名した大統領令が、アメリカの宇宙業界で大きな話題になっています。内容は 「商業宇宙打ち上げ規制の簡素化」。ロケットの打ち上げや再突入に必要だった環境影響評価を一部免除したり、審査をスピードアップすることで、民間企業がもっと積極的に宇宙へ挑戦できるようにする狙いです。
Source:Trump aims to foster space industry by cutting environmental regulation
Source:Enabling Competition in the Commercial Space Industry
具体的には、FAA(連邦航空局)の Part450規則や国家環境政策法(NEPA)の見直し が行われ、商務省・国防総省・運輸省・NASAに新しい宇宙港建設の障壁を取り除くよう指示 が出されました。目標は2030年までに商業打ち上げを大幅に増やすこと。SpaceXのような大手だけでなくスタートアップにも追い風 になりそうです。
規制緩和が新しい打ち上げ需要を呼び込み、ベンチャーから大手まで幅広い企業が宇宙市場に挑戦しやすくなる一方で、制度設計や実行力が試される局面でもあります。今後数年間で、この政策が「宇宙産業の新たな黄金期」を切り開くのか、それとも期待先行で終わるのか——その行方をしっかり追っていきたいと思います。
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