Weekly newsletter #28
GAFAM各社の1〜3月期の決算が出そろいました。パンデミックの影響で大きな恩恵を受けた格好で、いずれも大幅な増収増益です。広告費で稼ぐGoogleは、YouTubeの視聴時間が増加して広告費が伸長。加えてクラウドサービス(GCP)も大きく成長した。AmazonのEコマースの売上激増は想像の通りだが、利益面ではこれまでクラウド事業(AWS)が補っていた形だが、今回はEコマース事業の利益が前年の2.6倍で、AWSを上回るという状況になった。最もクラウド事業が成長しているのはMicrosoft(Azure)で、前年比の50%成長している。Appleは、相変わらずiPhoneが売れているが、リモートワークやオンライン授業などの需要で、iPadやMACの売上げが70%以上伸びている。
このような状況の中、バイデン大統領は就任100日に合わせた施政方針演説を行い、法人税と富裕層の所得税の増税を表明した。米国の多くのトップ企業がタックスヘイブンや税制の抜け道を利用して納税を免れていると批判した。
米国の税制は、連邦政府が定める税制のほか、州ごとに税制が大きく異なるため、問題を複雑にしているように感じる。Amazonは、連邦法人税を納付し始めたのは2019年からで、それまでは一切納税していないと言われている。AmazonやMicrosoftが本社を置くワシントン州や最近シリコンバレーから移転が増えているテキサス州などは、法人税や所得税がありません。売上税や総収入税などと言った違う形で納付はあるものの、各社は税制面で有利な場所を選んでビジネスをしているのは確かです。
タックスヘイブンとして、ケイマン諸島は名前を聞いたことがあると思いますが、それに続くタックスヘイブンがデラウェア州です。GAFAMを始めとした28万5000社以上もの企業の本社は、登記上デラウェア州に存在している。デラウェア州には、売上税がなく、州外で提供している商品やサービスには州の法人所得税もありません。ペーパーカンパニーの子会社を設立して、課税対象にならない無形資産の使用料授受を行って租税回避を行われています。Googleは、ダブルアイリッシュという租税回避の手法を使って、アイルランドで8兆円以上の売上を獲得しているとう報道もあります。
いずれも合法的な手法で、且つ企業として利益の追求は当然だとしても、米国内の経済格差だけを考えても、見直すべき点は大いにあると言わざる得ないでしょう。
https://gigazine.net/news/20210412-delaware-incorporate-company/
Lyftは自動運転部門をトヨタ子会社に5億5000万ドルで売却
ライドシェアのLyftは、自動運転ユニット「Level5」をトヨタの子会社であるWoven Planetに5億5000万ドルで売却。LyftのLevel5は、カリフォルニアの他、ミュンヘンやロンドンを含めて約300名のエンジニアが在籍しており、トヨタは自動運転に関わる人材とこれまで蓄積された自動運転データを獲得することになる。トヨタの自動運転技術を開発するTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)とWoven PlanetとLevel5を1つのチームに統合して1,200名規模の組織になるという。
自動運転技術の開発と事業化が長期戦になっていることから、スタートアップの買収を始めとして新たな再編が起こっています。最近の案件では、Uberの自動運転部門をAuroraが買収。ZooxはAmazonが買収。GM傘下のCruseはVoyageを買収。その他にも出資や提携などを含めると話は山ほどあります。自動運転の事業化をいち早く成功させるのは一体誰になるのでしょうか。早くレベル5(完全自動運転)を体験したいものです。
トヨタ子会社のWoven Capitalは自律配送車「Nuro」へ投資 (Weekly newsletter #23)
Auroraは自動運転タクシーでトヨタとデンソーと提携 (Weekly newsletter #17)
https://techcrunch.com/2021/04/26/lyft-sells-self-driving-unit-to-toyotas-woven-planet-for-550m/
VMwareは通信事業者のRANを仮想化へ移行させる
VMwareは、VMware Telco Cloud Platform RANをリリース。これは、CSP (通信サービス事業者)が RAN (Radio Access Network)の機能を仮想化 (vRAN)し、オープンなRAN (O-RAN)を実装するためのプラットフォームとなります。RAN設備のセントラルユニット(CU)と分散ユニット(DC)の仮想化を実現し、仮想マシンやコンテナの管理、監視や自動化を提供する。CSPは、運用を中断したりネットワーク設計を見直すことなく、従来のRANからvRAN、O-RANへと柔軟に進化させられ、新しい5Gアプリケーションやエッジサービスを迅速に導入することが可能となる。
GoogleとIntelが提携して5Gアプリケーションの展開を加速 (Weekly newsletter #19)
DishとAWSが5GクラウドベースのO-RANで戦略的パートナーシップ
LiDARのLuminarは、エアバスと提携して自律飛行を目指す
自動運転車への搭載が進むLiDAR(Light Detection And Ranging:光検出と測距)は、レーザー光を照射して物体に当たって戻ってくるまでの時間を計測して、距離や方向を測定するものだが、これを航空業界にも導入していく。Luminarは、若干25歳のAustin Russell が率いるLiDAR開発メーカーとして昨年SPAC上場を果たしている。彼は、Paypalの共同創業者のPeter Thielが設立した奨学金プログラム「THIEL Fellowship」が支援してきた人物だ。Luminarは、レーザー光源を従来のシリコンと異なる物を使ってコストダウンを図りつつあり、注目を集めている。
自動運転車を実現するにはLiDARが必須と思われがちだが、頑なにTeslaだけはLiDARを採用しないと明言している。高コストや消費電力の大きさがLiDARを採用しない理由とされているが、その真意は定かではない。
さらにニュースから少し逸脱するが、LiDARは iPhone 12Proシリーズにも搭載されている。車載搭載用のLiDARとは異なり5mまでの計測となるが、暗所でもポートレート写真の背景をきれいにぼけさせたり、AR(拡張現実)アプリを使って、現実に存在する物体と仮想の映像との位置関係(手前にあるか奥にあるのか)を正確に計測することで、非常にリアルAR体験を可能にしている。AppleのLiDARには、受光部の部品として、ソニー製のSPAD(単一光子アバランシェダイオード)センサー技術が使われており、今後のiPhoneにもLiDARが搭載されていけば、ソニーが大きなシェアを確保していくことになる。
https://www.theverge.com/2021/4/26/22399389/luminar-airbus-lidar-aviation-evtol-partnership
パナソニックが BlueYonder を71億ドルで買収
パナソニックがAIサプライチェーン管理ソフトウェアのBlueYonder(旧JDA)を71億ドルで買収。両社は2019年に日本で合弁会社を設立しており、今回はさらに一歩踏み込んだ格好だ。パナソニックのIoTとエッジ技術を複合的に組み合わせ、AI/MLによる自律型サプライチェーンの構築を加速させるという。サプライチェーン管理ソフトウェア(SCM)は、ERPソフトウェア製品の1モジュールとして提供されることが多く、BlueYonderは、SAPやOracleに次ぐ業界3位にランクされている。ハードウェア企業のパナソニックが、このソフトウェアベンダーをうまく活かせるのか懐疑的な見方が多いようだ。事実、買収報道を受けてパナソニックの株価は急落している。