CDC(米国疾病管理予防センター)の発表によると、2020年の「薬物」の過剰摂取による死亡者数が、9万3,000人以上という過去最高の数字(2019年より30%増加)に達しました。交通事故による死亡者数の2倍以上に当たる数字とのことです。
薬物は、コカインやメタンフェタミン(覚醒剤)に加えて、違法なオピオイドやフェンタニルなどの鎮痛や麻酔目的で使用される合成物が混ぜ合わさって、呼吸停止を引き起こしているとのことです。また、パンデミックの影響で、孤立や不安、うつ、失業、人間関係や育児問題などのストレスが急増する中で、薬物治療者が依存症治療薬の入手が困難になったために過剰摂取が増えたとも言われます。
一方、連邦政府レベルでマリファナ(大麻)を合法化する法案が発表されました。
現在、嗜好用大麻は全米18州で合法であり、医療用大麻は37州以上におよびます。これを全米で合法化することで、大麻所持などで不当逮捕された黒人やコミュニティの救済や社会的影響を評価するなどの名目がありますが、酒類などと同様に物品税を課すという点が大きなポイントなのではないでしょうか。大麻は、日本でも違法なため、上記のコカインや覚醒剤と同等に語られますが、合法化されている州では、適切な使用方法であれば、メンタルヘルスにおいて良い影響を与えると認められている。大麻成分の中から精神活性作用のTHCを除去したカンナビノイドは、リラックス効果、睡眠改善、抗炎症作用などがあるとして、CBDオイルとして日本でも合法で入手可能になっている。
2019年頃から多くの州で大麻が合法化され、大麻産業は「グリーンラッシュ」と呼ばれる一大産業に成長しました。25万人以上の雇用を生み、2027年までには480億ドルの市場になると予測されています。また、多くの大麻関連のスタートアップも誕生しています。さらに、大麻だけでなく、サイケデリック医療と呼ばれる精神疾患の治療薬が登場し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、うつ病、依存症などを改善することが可能になるとして、新たな分野として注目され始めているようです。
IntelはGlobalFoundriesを約300億ドルで買収交渉中
Intelは半導体受託製造会社のGlobalFoundriesを300億ドルで買収する方向で交渉中だと報道されている。3月にIntelのCEOパットゲルシンガーは「IDM2.0」という新戦略発表の中で、自社製品だけでなく外部委託製品の製造を含めたファウンドリ事業を強化する方針を打ち出している。アリゾナに2つの新工場を建設することも計画されているが、これをさらに強化していく動きだと理解できる。GlobalFoundriesは、2008年にAMDからスピンオフした会社で、これを競合のIntelが買収するというのは皮肉なものだ。
TSMCは世界的なチップ不足の解消を示唆
世界最大の半導体受託製造会社のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、今後数週間のうちにチップ供給が急増することが期待できるとし、世界的なチップ不足が最も深刻な段階を過ぎた可能性があることを示唆した。カーエレクトロニクスに使用されるマイクロコントロールユニット(MCU)の生産量を前年同期比で30%増加させ、通年では2020年に比べて60%増加する見込みであるとのこと。2024年に稼働予定のアリゾナに建設する工場に加え、日本にも工場を建設することを検討していると発表した。
Google GlassでGoogle Meetに参加できるようになりました
Googleが提供するARヘッドセット「Google Glass」(Glass Enterprise Edition 2)を使って、ビデオ会議システム「Google Meet」に接続できる「Meet on Glass」のオープンベータ版をリリースした。Glassを装着した参加者の一人称視点の映像を共有しながらハンズフリーでビデオ会議ができるようになる。Glassの価格は999ドルで、北米では直接購入可能だが、日本ではNTTドコモを通じて購入が可能ということだ。
Squareはビットコインを使った分散型金融ビジネスを展開する
決済会社のSquareは、ビットコインを使った「分散型金融(DeFi)サービス」に特化した事業を開始するとCEOのジャックドーシーがツイート。
分散型金融(DeFi)とは、中央集権的な銀行や金融機関は介在せず、ブロックチェーンベースのスマートコントラクトを使って取引を実行でき、従来の金融サービスと同様に機能する。DeFiのエコシステムに参加し、スマートコントラクトに暗号資産を「ロック」することにより、約15%から30%の利回りが得られる。暗号通貨と同様にDeFiにも規制やリスクはまだあるが、現在すでにDeFi関連の契約にロックされている資金の推定額は、552億1,000万ドルにも上るという。
今年4月に日銀もDeFiについてレポートしているが、イノベーションのメリットを認めつつも、規制の難しさを語っている内容となっている。
コンピューターインプラントにより、言語麻痺の患者の考えた文章を直接PC画面に表示
カリフォルニア大学は、18年前の事故により脳幹麻痺で言葉を発することができなくなった患者の脳に医療用インプラントを装着し、脳波を読み取って文章を生成することに成功した。このブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は、脳で思考した単語の脳波パターンをコンピュータアルゴリズムで学習させ、50単語を関連付けて1,000以上の文章を作成できるようになった。患者が考えてPC画面に文章が表示されるまで3−4秒かかってしまうため、速度、精度、語彙数の向上が必要なようだ。
イーロンマスクのNeuralinkが実現しようしていることも同様の試みだ。最近はこの分野の話題も多く、急速に技術発展している様子が伺える。
脳インプラントにより視覚化した文字をテキストに変換 (Weekly newsletter #30)
Neuralinkは猿に脳に搭載したデバイスでゲームをさせる (Weekly newsletter #25)
トヨタのWoven PlanetがHDマッピングのCarmeraを買収
トヨタのウーブンプラネットは、HDマップ(高精細マップ)のスタートアップ企業であるCarmeraを非公開の金額で買収。Lyftの自動運転車部門であるLevel5を5億5,000万ドルで買収に続くものです。HDマップとは、LiDAR、カメラ、GPSなどを利用して道路の形状、道路標示、交通標識などの情報を含む高精度な3次元マップで、自律走行用マップとして用いられる。Carmeraは、HDマップにリアルタイムイベントと変更管理エンジンを搭載し、都市情報の変化を検出してサードパーティの地図にも統合できるようサービスを提供している。
Woven Planet が中心となって、トヨタのモビリティイノベーションを牽引していくことに期待したいですね。
トヨタ子会社のWoven Capitalは自律配送車「Nuro」へ投資 (Weekly newsletter #23)
冒頭の薬物過剰摂取の話ですが、オピオイドは中毒性が高く危険な鎮静剤として20年近く認識されており、米国内の数十万人に深刻な被害をもたらしたとして、各州から訴訟を起こされていました。そして、今週ジョンソン&ジョンソンと医薬品卸売企業3社は、260億ドルの和解金を支払うことになりました。
https://www.nytimes.com/2021/07/21/health/opioids-distributors-settlement.html
また、中毒性は低いと偽って販売促進に加担したコンサル会社のマッキンゼーも2月に6億ドルの和解金を支払っていました。
https://www.nytimes.com/2021/02/03/business/mckinsey-opioids-settlement.html
あのプリンスの死因もオピオドの過剰摂取だったそうです。知らなかった。。
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/25832?n=2&e=26065
売上を優先した製薬会社と卸売会社が違法市場に流す医師との癒着などが、被害をさらに拡大させたようです。この問題を題材にしたノンフィクション本があったのでご紹介しておきます。
「DOPESICK〜アメリカを蝕むオピオイド危機〜」
https://www.amazon.co.jp/dp/B088TT2CYD/